文化審議会は16日、上板町佐藤塚の「戸田家住宅」を国の重要文化財に指定するよう馳浩文部科学相に答申した。近代の藍商農家の屋敷を代表する建造物として認められた。近く告示される。県内の建造物の国指定重要文化財は18件となる。阿波藍関連では、1976年に指定された石井町藍畑の「田中家住宅」に次いで2件目。
戸田家住宅の敷地は3159・89平方メートル。明治を中心に、江戸時代から昭和初期にかけて建てられた主屋(しゅおく)、東座敷、土蔵、長屋門、藍寝床、西蔵、乾(いぬい)蔵、灰屋の8棟が並ぶ。
吉野川下流域にあった藍商農家の屋敷の典型的な構造で、洪水対策として敷地を石垣で高くし、中央の主屋を取り囲むように塀と蔵が配置されている。近代の藍生産に関する建物一式が、ほぼ完全な形で残る。
藍を発酵させていた藍寝床の軒下には15・76メートルの長い一本物の木材が使われているほか、木造2階建ての主屋には帳場や住み込みで働いていた女性用の部屋がある。東座敷は接客用の建物で、主屋から客間を分離するという近代和風建築の特徴を備えている。
阿波藍は明治中期に最盛期を迎え、戸田家は当時の徳島県の長者番付で最上段に記載されていた。使用人の食材を保管していた西蔵や、藍の保管場所だった長屋門のそばに使用人用の風呂と便所があることから、多くの人が働いていたことがうかがえる。
現在は藍生産は行われておらず、住宅として使われている。
県教委は2011、12年に県の近代和風建築総合調査で戸田家住宅を調べた。その報告書を基に文化庁が追加調査を行い、特色が顕著なものとして評価された。
文化審議会はこのほか、石清水八幡宮本社(京都府八幡市)を国宝に、旧網走監獄(北海道網走市)など7件を重要文化財に指定するよう答申した。全国の建造物の国宝・重要文化財は2445件になる。