在宅療養をする患者宅を訪れ、診療する笠松院長=徳島市内

 在宅療養している患者が、新型コロナウイルスの感染者や濃厚接触者になったらどうすればいいのか。徳島県内でも感染者が急増した2月、そんな状況に直面し、医療と介護が受けられず不安な日々を送った夫婦が、当時の困難な生活を語った。流行「第7波」で感染再拡大の懸念が高まる中、在宅医療に携わる医師や医師会は事前の対策を呼び掛けている。

 「頼りにしている訪問介護のヘルパーに来てもらえず、本当に困った」。徳島市川内町の自宅で療養生活を送る石原義輝さん(90)と妻の裕子さん(84)は当時を振り返る。

 義輝さんは筋力が保てなくなる難病「重症筋無力症」、裕子さんは首の神経が圧迫されて手足がしびれる「頸椎(けいつい)症」を患っている。家族は2人だけ。同市のかさまつ在宅クリニックの笠松哲司院長(51)が2週間に1回診療に訪れる。訪問看護は週3回、訪問介護も毎日2回受けている。

 2月上旬、義輝さんを担当する看護師が新型コロナに感染した。義輝さんは保健所から濃厚接触者と判定され、訪問看護、介護とも中断された。

 2人は車いすが必要で、思い通りに外出できない。食料品はヘルパーが玄関前まで運んでくれ、食事は何とかやりくりできた。困ったのは入浴や室内清掃ができなかったことだ。幸い2人とも感染していなかったが、不自由な生活は約2週間続いた。

 この間、笠松院長が電話で夫婦の体調を気遣い、心の支えになった。2人は「いつまでこんな生活が続くのか分からず不安だったが、先生が何でも相談に乗ってくれて心強かった」と感謝する。

 徳島市医師会によると、自宅で終末期を過ごしたいと願う高齢者や家族は年々増え、在宅医療の需要は高まっている。一方で患者や介護する家族が陽性者、濃厚接触者となった場合、診療だけでなく生活支援をどうするのかが課題だ。

 笠松院長は「他に介護してくれる家族がいなければ、一時的に介護施設に入る方法もある。難しい選択を迫られるので、普段からどのような方法があるのか考えておいてほしい」と話している。

 徳島市医師会は、在宅療養者がいる家庭で新型コロナ感染者が出た場合の対処法などを紹介する動画「知って備えよう、コロナ禍の在宅療養」を制作し、動画投稿サイト・ユーチューブで配信している。

 動画は約1時間で、笠松院長ら医療、介護の専門家7人が出演。1人で介護を担う家族が新型コロナに感染した場合の対応方法、感染者が自宅療養する際の心構えなどを分かりやすく解説している。