飾り気のないアコースティックギターの断片を聞くだけで、音色の向こうに浮かび上がってくる情景がある。人がいる。ドラマのエンディングテーマなら、なおのこと

 徳島市で竹原ピストルさんの公演を聞いた。歌手、俳優として活躍中だが、知らない人がいるなら念のため。昨年末の紅白歌合戦で「よー、そこの若いの」と歌った、ひげ面のあの人である。徳島とは縁があって、十数回目のライブになるという

 「Forever Young」。ドラマ「バイプレイヤーズ」。勘のいい人ならもうお分かりだろう。竹原さんの歌の向こうに浮かんできたのは、亡くなった俳優大杉漣さんである

 FOREVER YOUNG/あの頃の君にあって/FOREVER YOUNG/今の君にないものなんてないさ-。半生をぼちぼち振り返ったりもする年齢になった人間を、励ましてくれる歌ではあるけれど、この時ばかりは別の感慨がじわりと胸に広がった

 ないものなんてない、かもしれないが、二度と会えない人はいる。徳島でどうしてもやりたかった、と歌い始めた「藍色のハンカチ」は、お別れ会で配られた藍染のハンカチに、大杉さんへの思いを託す

 涙を拭こうとしたら、不思議なことに、なおさら涙が出る…。目を閉じて腹から振り絞るしわがれた声が、心の奥底までしみた。