防火安全基準に適合しているホテルや旅館であることを示す「適マーク」制度の利用が徳島県内で進んでいない。9月末時点で、県内の対象施設のうちマークが交付されているのは10・5%にとどまっている。マーク取得が義務ではない上、制度自体が周知されていないことが要因とみられる。
県内の13消防本部と3町村によると、制度の対象となる収容人員30人以上で3階以上(地下を除く)の宿泊施設は152施設ある。このうち交付済みは7市の16施設にとどまる。内訳は徳島市が8施設、阿波、三好両市が各2施設、鳴門、小松島、吉野川、美馬の4市が各1施設。
適マークは、宿泊施設からの申請を受けて消防機関が審査する。初期消火や避難誘導のための計画作成などを定めた消防法令や、建築構造などの基準に適合していれば交付される。
制度は2003年に一度廃止されたが、12年5月に広島県福山市で7人が犠牲となるホテル火災が発生したことを受け、消防庁が検査項目を厳格化して14年4月に復活させた。
徳島県内の複数の消防本部の担当者は、交付が進んでいない理由について「宿泊客のマークの認知度が低いので、施設側が取得するメリットを感じていない」と指摘する。「古い建物だと(法律上は問題ないが)建築構造の基準をクリアできない場合がある」との声もある。
一方、修学旅行を受け入れているホテルや旅館は、旅行会社から適マークを確認されることがあるため、取得する傾向が強い。
消防庁によると、交付率は全国的に低く、14年10月末時点で全国平均は7・2%。同庁予防課は「宿泊施設の防火体制を強化するため、マーク取得が広がるよう働き掛けたい」としている。