阿波市出身の映画監督三木孝浩さん(47)の新作が今夏に相次いで公開される。「今夜、世界からこの恋が消えても(愛称・セカコイ)」(7月29日公開)、「TANG タング」(8月11日公開)、「アキラとあきら」(同26日公開)の3本で、ラブストーリー、SF、経済ドラマというバラエティー豊かなラインナップだ。三木監督に各作品の見どころや製作の裏側などを聞き、3回に分けて紹介する。第1回は「セカコイ」。

©2022「今夜、世界からこの恋が消えても」製作委員会
©2022「今夜、世界からこの恋が消えても」製作委員会

 セカコイは、一晩眠ると前日の記憶を失う「前向性健忘」を患うヒロイン・真織と、そんな彼女と一日限りの恋を積み重ねていく主人公・透との切ない恋愛が描かれる。アイドルグループ「なにわ男子」の道枝駿佑さんと、福本莉子さんがダブル主演し、本格的な映画初主演を果たした。

 三木監督は、道枝さんについて「いつもはかわいらしいイメージですけど、今回は凜(りん)としたかっこよさを引き出したかった」と言う。花火会場で真織が透に苦悩を吐露するシーンを挙げ、「透の真織を守りたいという思いがあふれた瞬間で、震える声を抑えながら優しく声をかけている感じは現場で見ていてグッときました。道枝君が役者として階段を上った瞬間だったと思う」と振り返る。

 福本さんとは「思い、思われ、ふり、ふられ」(2020年)以来のタッグとなった。「前回、思ったようにお芝居ができなくて悔し泣きをしていたことがあったんです。その時に見せた芯の強さをもっと引き出してやろうと思いました」。その上で「今回は信頼して、細かく指示するより彼女自身が答えにたどり着くまで待つ感じで進めました。できなくても、できないなりに、できるためにどうするかを自分で考えて乗り越えていたので、すごく頼もしかった」と話す。

三木孝浩監督(スターダスト提供)

 「セカコイ」は今夏公開の3本のうち最後に撮影した作品。ジャンルの違う二つの作品を経て、何度も製作してきた青春恋愛ものを再び手掛けたことについて「同じ恋愛ものでも、毎回役者という素材が違うので、今回はどう料理しようか、その味をどう引き出すのか。そこはやっぱりワクワクしますね」と語る。

 これまでにも若手俳優の初主演作品を数多く手掛けている。「若い役者と仕事をするときは、彼らの今輝いている瞬間を切り取りたいという欲求が強くて、彼らのドキュメンタリーを撮っているような気分なんですよ」。続けて「旬の若い役者が成長して、隠れた魅力が花開く瞬間をしっかりと切り取りたいので、自分のやり方を押しつけて手癖で撮らないように心掛けています。彼らの魅力が一番伝わる方法で撮りたいので、そこは見失っちゃいけないなと思いますね」と説明する。

 今作の見どころについては「10代の恋愛ものではありますけど、全体のトーンとしては、ある種のシリアスさを持っている作品なので、自分の中では『祈り』というテーマも込めて撮りました。いろんなキャラクターがそれぞれに誰かの幸せを祈っている作品だなと思ったので、祈りにも似た静謐(せいひつ)な世界観というのは意識しました。その辺に注目してもらえるとうれしいですね」とPRしている。(植田充輝)

©2022「今夜、世界からこの恋が消えても」製作委員会

『今夜、世界からこの恋が消えても』

7月29日(金)全国東宝系にて公開

<スタッフ>
原作: 一条岬『今夜、世界からこの恋が消えても』(メディアワークス文庫/KADOKAWA刊)
監督: 三木孝浩
脚本: 月川翔 松本花奈
音楽: 亀田誠治
主題歌:「左右盲」/ヨルシカ(UNIVERSAL J)

<キャスト>
道枝駿佑(なにわ男子) 福本莉子
古川琴音 / 前田航基 西垣匠
松本穂香
野間口徹 野波麻帆 水野真紀 / 萩原聖人