遺影の撮影に臨む女性=徳島市南沖洲5のスタジオエース

 遺影の撮影や葬儀の準備など、生前に人生の締めくくりを準備する「終活」に取り組むお年寄りが徳島県内で増えている。自分らしい最期を迎えようと、支援団体などへの相談も相次いでおり、必ず訪れる死に向き合っている。相続を巡る親族間のトラブルを防ぐため、公証役場で遺言を作る人は10年間で約1・5倍になった。

 写真スタジオのスタジオエース(徳島市南沖洲5)では、お年寄りが月に1人程度訪れ、釣りや居合といった趣味に合わせた服装で遺影を撮っている。自宅での撮影も可能で、その人らしい一枚を残している。

 友人と撮影に臨んだ同市住吉3、主婦三好香代子さん(62)は「遺影といえば堅いイメージがあったが楽しかった。良い写真が残せる」と話す。

 葬儀や終活を支援するNPO法人ココロの雫(しずく)(同市川内町加賀須野)には、通夜や告別式は行わない火葬だけの「直葬」の問い合わせが多い。新居見確理事長(43)は「本人や遺族が納得した形で葬儀を行うためにも、内容を決めておく方がいい」とアドバイスする。

 終活サロン心(同市北沖洲2)では、2016年の開設時に月1、2件だった相談件数が、現在は月15件ほどに伸びている。無縁墓になる前に墓を処分する「墓じまい」などに関する相談が多い。担当者は、葬儀方法や納骨場所を書く「エンディングノート」の利用を勧めている。

 相続を巡る遺族間のトラブルを防ぐため、公正証書遺言を作る人も増えている。徳島、鳴門両公証役場(鳴門は今年6月末に廃止)で17年に作成された公正証書遺言は569件。07~10年は400件前後だったが、11年に472件、12年には514件と初めて500件を上回り、その後は増加傾向にある。

 作成者は定年退職した高齢者が中心だが、子どもがいない50代夫婦や、病を患いながら未成年の子どもを育てる母親も目立つ。

 公証人の栗坂滿さん(65)は「1千万~2千万円の遺産を巡るトラブルが多い。公正証書遺言を作れば、望まない争いを防止できる」と話している。