三井物産時代にベンチャー企業への投資、育成を手掛けてきた実績が買われ、東証1部上場のIT企業インフォマート(東京)のトップに就いて4カ月。「さらなる成長へ、可能性はいろいろと見えている」と自信をのぞかせる。
その一つがビッグデータの活用だ。同社は、企業間の電子商取引システムでは国内最大級のプラットホームを運用している。受発注や請求など、顧客間でやりとりされる膨大な取引データを解析することで「提供するサービスの高度化も含めた新たな展開ができると考えている」。
三井物産では、米コロンビア大の法科大学院に社費留学し、ニューヨーク州の弁護士資格を取得。法務部門で順調にキャリアを積んだ。
入社20年で、畑違いの投資部門に異動を願い出る。「法務担当はあくまで事業のアドバイザー。自ら意思決定する仕事がしてみたくなった」。製薬会社向けの専門人材派遣を手掛ける米企業の日本法人への投資など、大型の案件に挑んで成果を上げた。
2005年に国内外の企業を対象とする投資子会社の社長に就任。ITや半導体、創薬などの新産業分野で投資先に伴走してきた。08年のリーマン・ショックの影響は小さくなかったが「運にも味方された」。投資先の創薬産業が波に乗り、翌年には企業投資部門の黒字転換を果たした。
15年に三井物産を早期退職した後は、北海道の農業法人の顧問に就いた。さらに長らく関心を持っていた弘法大師空海の思想を学ぼうと高野山大大学院に入り、和歌山県に居住。古里徳島を離れてからあまり縁のなかった地方都市の現状も知ることになった。
「地方創生」で大切なのは「東京の発想に惑わされないこと」と実感している。「地域の実情をよく知らない人間の言うことを過信してはいけない。地域に根を下ろし、試行錯誤している皆さんの感覚を信じて、東京とは異なる価値観を追求してほしい」。
ながお・おさむ 徳島市生まれ。城南高、東大法学部卒。1982年、三井物産に入社して法務を担当。04年、投資先のクインタイルズ・トランスナショナル・ジャパン(現IQVIAサービシーズジャパン)に出向し上席副社長。2005年、MVC(現三井物産グローバル投資)社長。12年、米国三井物産上席副社長。高校時代はラグビーの県高校選抜。58歳。