最終選考作品19点が決まった「第5回徳島新聞 阿波しらさぎ文学賞」(徳島文学協会、徳島新聞社主催)。選考に当たった徳島文学協会の佐々木義登会長(四国大教授)に寄稿してもらった。

 5回目は470点の作品が集まった。国内44都道府県のほか、海外からも4作の応募があった。昨年より減ったが過去2番目の多さだ。応募者の最高齢は96歳、最年少は13歳、平均年齢は45・6歳と幅広い層から作品が寄せられた。

 応募の増加を受けて、昨年から2段階で選考することとなっている。1次選考通過者は50人だった。全体として昨年よりさらにレベルが上がったという印象だ。これまでなら通過していた作品が多数、選から漏れた。応募者が繰り返し投稿するうちに年々腕を上げて、全体のクオリティーが上がってきている、という推測は大きく外れていないと思う。

 ちなみに1次通過者の最年少は18歳、最年長は80歳だった。また徳島県関連の書き手は14人が通過した。昨年同様、若い書き手の活躍が目立ったが、中高年の作者の力作も目を引いた。

 昨年はコロナ禍を題材にした作品が多かったが、今回はコロナをテーマにした作品が目に見えて減っていた。作品に盛り込まれた徳島に関する要素は、眉山、渦潮、藍、お遍路、阿波踊りなど定番のほか、大谷焼、木偶、インディゴソックスなど多岐にわたっていた。内容も王道の人間ドラマ、命の営みと誠実に向き合った作品、言葉の力を限界まで引き出そうとする前衛的な作品などさまざまだった。

 2次選考については、クオリティーの高い作品が多く選考に苦労した。これまで上位に評価されていた実力者も名を連ねているが、初めて見る書き手も多数いる。たとえ実力があっても容易に通過できない狭き門となった。最終19作には徳島ゆかりの書き手が5人、海外からも2人が残った。どれも際立った個性を発揮しており、表現も細部に至るまで隙がない。過去最高レベルの争いとなることは避けられず、最終選考会が難航するのは想像に難くない。

 昨年同様、最終選考会は芥川賞作家の吉村萬壱さん、小山田浩子さんを中心に開催される。阿波しらさぎ文学賞、徳島県関連の徳島新聞賞、25歳以下を対象とする徳島文学協会賞、三つの受賞作の発表をぜひ楽しみにお待ちいただきたい。

最終選考候補と1次選考通過作品

 「第5回徳島新聞 阿波しらさぎ文学賞」の最終選考候補作と1次選考通過作品は次の通り。 (順不同、敬称略)

 【最終候補作品】「火取虫」小川真我(東京都)▷「眺め」鎌田航(鳴門市)▷「緑色の」新田一巳(新潟県)▷「流れる」山角洋平(フランス)▷「人形たち」木耳(大阪府)▷「中洲港に深く」髙村峰生(兵庫県)▷「自己紹介が苦手」吉美駿一郎(広島県)▷「坪尻心中」馬場広大(宮崎県)▷「実」北迫薫(東京都)▷「おいでよ、徳島。」日比野心労(新潟県)▷「冷淡」菊野啓(徳島市)▷「ふぃっしゅ」鍋島大輝(北島町)▷「やくそくの箱」中川マルカ(東京都)▷「湿り」うっかり(徳島市)▷「ゾウキリン」坂崎かおる(神奈川県)▷「あるもの」山川葉子(フランス)▷「沙田さん、粉をくう」山本真幸(東京都)▷「オフライン」冨士野賢太(小松島市)▷「図書館までの路」才谷文子(沖縄県)

 【1次選考通過作品】「もういない場所で」柊木葵(神奈川県)▷「渦の子、人の親たちは」中神円(東京都)▷「ゆめ」小林映月(東京都)▷「犬の子」本條七瀬(大阪府)▷「竹林に居る」石田宗之(東京都)▷「ジィジィ」芹沢単庵(阿波市)▷「DAOを活用した地域活性化計画(純粋小説批判)」塚原怜(東京都)▷「光」髙梨花子(千葉県)▷「種を燃やす」松樹凛(東京都)▷「鯨の庭」太田真未(石井町)▷「廃路線」月嶋修平(大阪府)▷「海藻」蔭山武史(徳島市)▷「ふたりのコータ」奈良原生織(神奈川県)▷「二匹」對馬考哉(青森県)▷「警鐘」小川碧海(兵庫県)▷「尖った横顔」長澤沙也加(埼玉県)▷「見てみろ、ヨミオ、今日の月はきれいだぞ」蒼井坂じゅーり(大阪府)▷「カピバラネバーノウズ」新藤茉広(千葉県)▷「渦」伊藤美希(鳴門市出身)▷「顔」折井かずは(東京都)▷「セニエの旦那」立田優詞(阿南市出身)▷「ウニの化石には棘がない」円井定規(東京都)▷「命の名」槲田瑶子(香川県)▷「骨」尾野森生(海陽町)▷「ゆれる」佐藤相平(神奈川県)▷「煙と海月」鈴木哲也(板野町)▷「草の力」赤木青緑(愛知県)▷「瞳の偏食」宮本大輔(小松島市)▷「忘れ貝」茜あゆむ(静岡県)▷「海辺の終末」春河純一(阿南市)▷「うなずきの糸」浮島真矢乃(東京都)