広々とした工場。職人たちが操るタフティングガンの音が響く。

一点一点、キャンバスに絵を描くように手作業で柄を打ちこむ。細かい柄の再現などは、手作業だからこそできることだそう。

 ハッとするような鮮やかさと、柔らかな風合いを兼ね備えるラグマットたち。さまざまなアーティストやファッションブランドとコラボし、SNSで話題を呼んでいる「MIYOSHI RUG/三好敷物」のオリジナルプロダクトだ。従来のように床に敷くのはもちろん、絵画のように壁に掛けても様になるラグマット。実はこれら、三好市三野町の工場で生まれている。

 「かつてこの辺りには、織物やカーペットの工場が何十社もあったそうです」。教えてくれたのは、企画・生産管理を担う市川武志さん(37・埼玉県出身)。工場の機械化や職人の高齢化の波を受け、現在では国内で数軒を残すのみという。三好敷物が拠点を置く工場も今年で閉業する予定だったが、「伝統技術を絶やさずに守りたい」と、もともと取引があった会社の市川さん夫妻が徳島へ移住。工場を技術ごと引き継ぐことになった。2020年にオリジナルブランド「MIYOSHI RUG/三好敷物」を立ち上げ、「アートやファッションを通じて伝統工芸を守る」をコンセプトに、洗練されたプロダクトを発信する。

 「MIYOSHI RUG/三好敷物」のラグマットは、フッキング(タフティング)と呼ばれる製法で作られる。フックガンという銃のような形の機械を用いて、デザインを下書きした基布に手作業で糸を植えこんでいく。工場で布に向かう6名の職人たちはほとんどが20代。平日の日中は商品を製造し、終業後や土曜は各々自分の作品づくりに没頭する。

 今年の春に地元・福岡の大学を卒業後、新卒で入社した西尾日花里さん(22・福岡県出身)。「インスタグラムでタフティングを偶然見かけて、日本でできるところを調べたら三好敷物が出てきたんです。直感でここだ!と思って、『働きたいです』とメッセージを送りました」。もともと「何かものづくりがしたい」という気持ちはあったというが、製造は未経験からのスタート。「難しいけど、どんどんできることが増えていく。それがすごく楽しいし嬉しいですね」。

 2年目の大島菜々さん(22・神奈川県出身)は、横浜美術大学でテキスタイルデザインを専攻していた。「家業を継いで左官になろうとしていたのですが、体力的に長くはできないかなと。当時、ラグとシルクスクリーンの制作が得意だったので『どちらかの職人になりたい』と思って大学の先生に相談したところ、ここを紹介していただきました」。鮮やかな色彩を、限られた数の中でやりくりするのが自身のスタイル。「三好市に来たことを作品にも反映させてみたい」と展望を話す。

 「MIYOSHI RUG/三好敷物」の商品は、オンラインショップで購入可能。不定期で県内のイベントに出店し、販売やワークショップなどを行う予定だ。