今年100回目の節目を迎える夏の甲子園。その年に「最後の夏」となる高校がある。阿南市の新野高校。今年4月に阿南工業と統合し、阿南光高校が新たに誕生したためだ。
新野は1990年代に春と夏の甲子園に1度ずつ出場している。92年春は1回戦で横浜と対戦。地元・阿南市の選手ばかりという地方の公立高校が、全国屈指の強豪私学を破った試合は印象的だった。96年夏は徳島大会を逆転で勝ち上がり、「ミラクル新野」という名が付いた。甲子園でも明徳義塾に逆転勝ちするなど、県民を感動させてくれた。記録より記憶に残るチームだったといえるだろう。
最後の夏となる徳島大会の初戦は16日、名西高校との対戦だった。緊迫する投手戦の末、七回に突き放した新野が逃げ切った。スタンドには在校生や保護者だけでなく、OBや地域住民も多数駆けつけた。勝った瞬間は拍手と歓声が湧き、甲子園で3度響き渡った校歌を、皆で歌う姿は感動的だった。
スタンドの人たちが手に持っていたのが黄色のメガホンだ。口に添えて「がんばれー」と大きな声援を送ったり、得点が入るとたたき合ったり。92年の甲子園初出場時に用意したもので、以来、受け継がれている。26年がたち傷みは激しいが、新野の歴史そのものであり、選手と応援する人たちをつなぐ象徴のように感じた。
新野の次戦は22日。最後の夏は、まだ終わらない。(#夕刊編集部)
※徳島県の高校野球を見つめてきた夕刊編集部デスクが、今夏の大会で感じたことを随時記します。