出発する客(左側)になでてもらうアッキー。右端は松井さん=美波町山河内の南阿波サンラインモビレージ

出発する客(左側)になでてもらうアッキー。右端は松井さん=美波町山河内の南阿波サンラインモビレージ

 美波町山河内の宿泊施設・南阿波サンラインモビレージで11年以上にわたり利用客を見送っている“看板犬”が、体調不良のため8月末で引退する。13歳の雄の秋田犬で、名前は「アッキー」。人間の年齢では90歳を過ぎている。見送った客は延べ1万組、3万人以上で、「寂しくなるけど、長い間お疲れさま」とねぎらいの声が上がっている。

 モビレージ社長の松井克弥さん(49)がアッキーと出合ったのは2010年12月。阿南市見能林町の友人に保護されていたのを引き取った。モビレージは同年5月から、飼い犬と一緒に泊まれる宿として運営しており、アッキーは管理棟内で暮らすようになった。

 松井さんが毎朝、出発する宿泊客を管理棟前で見送っていると、11年4月ごろからアッキーも参加するようになった。それ以来、一緒に出発を見守るのが習慣となった。アッキーが施設に併設するドッグランにも顔を出していたところ、人懐っこさから宿泊客の人気者になった。

 ところが12歳を迎えた21年秋からは、椎間板ヘルニアが原因で自力で立ち上がるのが困難になった。それでもチェックアウトの声を聞くと、管理棟の奥から立ち上がってきていた。

 それから1年近くがたち、松井さんの補助なしでは立ち上がれなくなったため、「お見送り業務」から引退させることにした。

 9月以降、アッキーが客の前に出る機会は少なくなるが、モビレージのツイッターを通じて定期的に情報を発信していくという。

 ここ3年間で50泊以上しているという岡部大志さん(44)=奈良市、会社員=は「訪れるたびに見送ってくれるので、家族と『かわいいね』と話していた。お疲れさま」。松井さんは「アッキーのおかげで、お客さまとの会話のきっかけが生まれた。モビレージにとって、なくてはならない存在だった。残りの時間をゆっくりと過ごしてほしい」と愛犬を見つめた。