藤田元治市長

 7月の参院選を巡り、公選法違反の疑いで徳島県警の事情聴取を受けていた美馬市の藤田元治市長(60)=同市美馬町宗ノ分=が9日、市長を辞職する意向を固めた。既に周囲に伝えており、近く記者会見で正式に表明する。県警捜査2課と美馬署は同日、特定候補への投票を市職員に依頼したとする公選法違反(公務員の地位利用、事前運動)の疑いで、市長を徳島地検に書類送検した。

 藤田市長は2期目で、任期は2024年6月18日まで。関係者によると、周囲に「市政を停滞させるわけにはいかない」と話し、任期を約2年残して辞職する考えを示している。地検の処分が決まり次第、辞職する見通し。

 市長は9日午前、報道陣に「進退は司法の判断を待って決めたい」と述べた。

 送検容疑は、選挙運動が認められていない参院選公示前の6月中旬、市長の地位を利用して、市役所内で市職員二十数人に対し、自民党から比例代表で立候補して再選された足立敏之氏(68)への投票を依頼したとしている。

 市長は数十人の職員に足立氏の顔写真や経歴が記された名刺サイズのパンフレットを渡していたが、受け取った日時や会話の内容などが明確になった件に限って立件した。部課長ら他の職員の関与は確認されておらず、県警は市長が単独で依頼したとみている。

 捜査関係者によると、藤田市長は執務時間中に市役所内の各課を訪ね、一人一人に支持する候補がいるかを確認した上で「いない」と答えた職員に「美馬市のためになる」などと話してパンフレットを手渡していた。支持する候補がいると答えた職員にも「こんな人もいる」と足立氏を紹介した。普段は訪れない課まで足を運び、職員が驚くこともあったという。

 足立氏は国土交通省で四国地方整備局長などを務めた。市長は9日、足立氏を支援した理由について「社会資本整備が重要だ」と説明した。

 県警は7月27日に市役所と市長宅を家宅捜索した。市長は同月下旬から8月上旬にかけての複数回の任意聴取に対し、容疑を認めているもようだ。

 公選法違反罪のうち、公務員の地位利用の法定刑は2年以下の禁錮または30万円以下の罰金。事前運動は1年以下の禁錮または30万円以下の罰金。起訴か略式起訴され、罰金刑以上の有罪が確定すれば公民権が停止され、市長は失職する。

 藤田氏は旧美馬町議、美馬市議を経て、11年の県議選で初当選した。2期目途中の16年、前市長辞職に伴う市長選に立候補し、無投票で初当選。20年5月に無投票で再選された。