須藤茂樹編著「徳島県謎解き散歩」

須藤茂樹編著「徳島県謎解き散歩」

 徳島県のあれやこれやについて、学芸員や大学教員といった気鋭の専門家らが深掘りし「おや、これは知らなかった」「ああ、そうだったのか」といった知識や気付きを与えてくれる一書である。江戸時代の藍商人をはじめ、鳴門が発祥の大塚グループ、LED製造の日亜化学工業といったベンチャー的な有力企業を輩出するなど「進取の気性」に富むと同時に、人形浄瑠璃、阿波踊り、藍染などの伝統文化を誇る「知恵の国・徳島に学ぼう」とうたっている。

 「新人物文庫」の書き下ろし作品として、2012年に刊行された。発行元の新人物往来社は、雑誌「歴史読本」を刊行していたことで知られる歴史系の出版社だ。

 徳島市立徳島城博物館の学芸員として、徳島の歴史や美術、文化の掘り起こしに取り組んできた須藤茂樹さん(現・四国大文学部教授)が全体を統括。須藤さんを含む18人が執筆陣に加わっている。徳島県では1990年に文化の森(県立博物館、県立近代美術館など)、1992年には徳島城博物館と、博物館施設が相次いでオープンし、学芸員も数多く採用された。本書は、そうした学芸員らが開館以来の展示、研究活動などで培った知識を惜しみなく開陳しており、非常に読み応えがある。

 「徳島県ってどんなとこ?」と題した第1章と、第2章(歴史編)、第3章(考古・人物編)、第4章(宗教・文学編)、第5章(民俗編)で構成。本編82本とコラム3本を収録している。

 総論的な第1章では▷貯蓄面で堅実といわれる県民性▷スダチなどの特産物▷徳島ラーメン、半田そうめんなどの食文化▷人類学者・鳥居龍蔵ら県出身の著名人▷「眉山」や「バルトの楽園」をはじめ、徳島を舞台にした映画や文学作品―などの情報やデータを網羅した。各論の第2章以下でも、例えばここ数年「最初の天下人」として再評価の進む戦国武将・三好長慶について、「織田信長のお手本は三好長慶だった?」と題した論考を収録。昨年亡くなった作家・瀬戸内寂聴さんを巡っては「瀬戸内寂聴はなぜ出家したのか」との考察を加えている。このほか、タヌキ伝説、お嫁さんのお菓子、遊山箱、阿波公方のマムシ除け札などの話題もピックアップ。阿波・徳島を巡る基礎知識からトリビアまでを、楽しく読みながら身につけることができる。

 刊行から既に10年がたつが、色あせない魅力を持った良書である。

 「徳島県謎解き散歩」は新人物往来社刊、800円(税別)。徳島県立図書館、徳島市立図書館などで閲覧できる。

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