小川真我さん

鎌田航さん

うっかりさん

 徳島をテーマにした全国公募の掌編小説コンクール「第5回徳島新聞 阿波しらさぎ文学賞」(徳島文学協会、徳島新聞社主催)で、大賞の阿波しらさぎ文学賞は、小川真我(しんが)さん(25)=東京都新宿区、派遣社員=の「火取虫(ひとりむし)」に決まった。これまでで最年少の大賞受賞。県内在住者と徳島出身者に贈られる徳島新聞賞は2人の同時受賞となり、25歳以下が対象の徳島文学協会賞は該当作がなかった。

 44都道府県とフランス、スペイン、米国から計470点(県内152点)の応募があり、最終選考に残った19点から入賞3点が決まった。

 徳島新聞賞は鎌田航さん(29)=本名航也、鳴門市鳴門町高島、造船業=の「眺め」と、うっかりさん(39)=本名原田英一、徳島市西須賀町東開、俳句講師=の「湿り」が選ばれた。

 阿波しらさぎ文学賞に輝いた「火取虫」は、主人公の秋男が、恋人の夏女(なつめ)の故郷徳島へ一緒に帰り、夏女の思い出の場所を巡りながら幻想と幻覚を体験する物語。秋男は徳島を巡る途中で疲弊し、道端で地獄を目撃する。夏女と眉山のホテルに入った秋男は、そこで夏女が持っていたホームビデオを見る。映像の中で鬼と火遊びする夏女。秋男は、どうにか夏女のところへたどり着かなくてはと思案するが...。

 小川さんは、朗報を耳にして「自分でも面白いぐらい声が上ずってしまった。それほど驚きと喜びが大きかった。自分の小説が知らない人に読まれて評価されたのは初の経験で、わくわくした。書くのは孤独なことで書いている姿を人に知ってもらえたことがうれしい」と話した。

 最終選考は芥川賞作家の吉村萬壱さんと小山田浩子さん、徳島文学協会の佐々木義登会長(四国大教授)、徳島新聞社の木下一夫理事編集局長が務めた。コロナ禍のためビデオ会議システムを使って開かれた。

 選考委員は「言葉の力で直球勝負をした。比喩がうまく、イメージを喚起させた。この人しか書けない独特の世界観がよかった」と高く評価した。

 阿波しらさぎ文学賞には賞金30万円が贈られる。徳島新聞賞は各10万円。「火取虫」と最終選考委員4人の審査評は26日付、徳島新聞賞の「眺め」は27日付、「湿り」は28日付の徳島新聞と徳島新聞電子版で紹介する。