阿波市土成町御所地区のたらいうどん専門店と市観光協会は、11月7日を「御所のたらいうどんの日」に定めた。戦前に御所村を訪れた知事が「たらいのような器に入ったうどんがうまかった」と発言し、命名の由来となった日付を、古い文献から1931年11月7日と特定した。記念日制定に合わせて7、8の両日、「阿波小麦フェア」と銘打ち、市産小麦を使った特別メニューを専門7店で提供する。
31年に御所村を訪れたのは当時の土居通次知事。飯盆(はんぼう)に入ったうどんを振る舞われ、周囲に「たらいのような器…」と感想を漏らしたことで知られるが、うどんを食べた詳しい日付は不明だった。
謎解きをしたのは、郷土史研究家の渡井亨さん(57)=同市吉野町西条。所有する戦前の文献「土御門(つちみかど)上皇 清和天皇 祭典史」に「31年11月7日に御所神社であった上皇の没後700年祭に、知事が出席」との記述を見つけ、たらいうどんでまちおこしを進める観光協会に連絡した。
当時は知事が年に何度も御所村を訪れることは考えにくいため、観光協会はこの日に知事がうどんを食べたと判断。御所地区の宮川内谷川沿いで営業する専門店7店に記念日の制定を打診し、全店から賛同を得た。
7、8両日のフェアには、2011年から小麦の栽培を続ける地元農家が約200キロ分を提供する。一般的な豪州産小麦と比べて、もちもちとした食感が特徴だ。7店のうち、「平谷屋」では2日間で約200食を販売する予定で、店主の平谷隆男さん(57)は「郷土の味を知ってもらうきっかけになれば」。
御所地区では昭和30年代まで小麦生産が盛んだったが、その後、稲への転作が進み、現在はほとんど作られなくなった。記念日制定には小麦生産を復活させ、ブランド化を図る狙いもあり、観光協会は「阿波市の魅力を再発見してもらい、小麦の生産量向上にもつながれば」としている。問い合わせは協会<電0883(35)4211>。