道路を横断する高齢者らの交通事故を防ごうと、徳島県警は3D映像で歩行を疑似体験しながら注意点が確認できる可搬型シミュレーターを導入した。老人会や学校などが開く交通安全教室に出張訪問するなどして活用していく。
シミュレーターは、横1・1メートル、縦0・7メートルのモニター画面が3台並び、CGで作成した車や道路、建物などが映し出される。モニター前に設置したカメラが体験者の動きを感知する仕組みで、画面の前で足踏みや腕振りをすると、街を歩くようにモニターの景色も移り変わる。
歩行中は画面の左右から車が走ってきたり自転車が前から飛び出してきたりする。信号機のない横断歩道を渡る場面では、手を上げて画面のドライバーに顔を向けると車が止まるなど、さまざまな危険回避法が学べる。雨や雪などの天候、車の通行量や速度といった場面設定も変えることができる。
県警は2005年に初号機となる歩行シミュレーターを導入したが、設置に広い場所が必要だった上、機器の調子が悪くなったことから徐々に使われなくなっていた。2機目となる今回のシミュレーターは組み立てに時間がかからず、持ち運びも簡単で、会議室など小規模な会場でも利用できる。
4日には徳島西署で高齢者向けの講習会があり、約40人がシミュレーターで学習した。疑似歩行を体験した重岡昭さん(83)=徳島市南田宮4、無職=は「手足を動かすと画面の景色が変わり、実際に歩いているみたい。道路に潜む危険がよく分かった」と話した。
県警交通企画課によると、県内では今年1~10月に交通事故で22人が死亡しており、うち13人(59・1%)が65歳以上の高齢者。亡くなった高齢者の3人は歩行中、4人は自転車で走行中だった。
シミュレーターを使った交通安全教室の開講依頼は、最寄りの警察署で受け付けている。