「新型コロナウイルス感染症の陽性登録者と接触した可能性があります」。8月20日夜、厚生労働省のコロナ対策のスマートフォン向け接触確認アプリ「COCOA(ココア)」から通知が届いた。アプリを開いてぎょっとした。「1日に合計442分の接触」。一体どこで?誰と? そもそもこれって正しいの?

 

祭りの雑踏の中で…

大勢の来場者でごった返す阿波踊りの演舞場=13日、徳島市

 COCOAは近距離無線通信「ブルートゥース」の機能を使い、利用者同士が半径約1メートル以内に15分以上居合わせると接触履歴を記録する。コロナに感染した利用者がアプリで陽性登録を行うと、接触の記録がある他の利用者に通知される仕組みだ。
 接触期間は「8月15日午前9時~翌16日午前9時」となっていた。徳島市の阿波踊り最終日の15日は、午前中は自宅で午後から出社。夕方から踊りの様子を取材していた。外出時間は午後6時半ごろ~10時ごろまでの約3・5時間=約210分。今のところ、当日社内で近くにいた人の中に感染者は確認されていないため、取材中の接触であることはほぼ間違いないだろう。

 

何人の陽性者と接触したかは分からず…15分未満でも通知される?

COCOAの通知画面

 接触時間は陽性者1人との接触ではなく、その日に接触した可能性がある全ての陽性者との合計時間となる。1人当たり15分間の接触があったと考えると、442分間で29人。ただ翌21日の夜に再度アプリを確認すると、接触時間が「451分」と9分間増えていた。23日の朝にはさらに12分増え「463分」に。厚労省に確認すると、通知基準は人数や1人当たりの接触時間に関係なく「1日の中で15分以上」であり、一度通知されると後から感染が判明した陽性者との接触時間が1分でもあれば追加されるという。

 

お盆の外出はハイリスク? 他県と比較すると…

 取材中、1カ所に長時間立ち止まることはなく、人混みの中を歩き回っていた。すれ違ったりした人を含めると、接触した人数全体はかなりの数になる。「踊り取材のコロナ対策に」と登録したが、予想外の通知に驚いた。阿波踊りの実行委は期間中の人出を公表していないものの、街中はかなりの人であふれかえっていた。県の調査によると、8月8~14日に全国から徳島への来県者が急増。京都、大阪、兵庫の3府県から訪れた人は前週(1~7日)と比べ、徳島駅周辺で211%増、富田町・秋田町周辺では393%と4倍近く増えていた。

左)関東1都3県から他県への移動状況  右)関西2府1県からの移動状況 出典:Agoop

 人出が増えた分、やはり感染リスクは高いのだろうか。他県ではどうだろうか。通信大手ソフトバンクの子会社「Agoop(アグープ)」がスマートフォンの位置情報を活用して算出したデータによると、全国の主要な駅で人出が増えたようだ。
 人口が徳島(72万6729人)と近い福井(76万7561人)と隣の高知県(69万3369人)、香川県(96万4885人)に注目してみた。関東1都3県と関西の3府県からの全国への移動(8月11~16日)を見ると、そこそこ人の動きはあったようだ。そこで新規感染者数を比べると、おおむね16日から数日間増加し、香川と福井は19日がピークに。徳島と高知は24日に過去最多を更新したが、過去2番目に多い1872人から159人増の2031人にとどまっている高知に比べ、徳島は21日の2584人から598人増の3182人と大幅に増えた。

 

ログチェッカーも活用 不安になったら必ず検査に

ログチェッカーで分析した結果

 この人出の多さで自分は感染していないのかと不安を覚えた。COCOAについてよく分からなかったため、厚労省のホームページを読んでいると、「COCOAログチェッカー」を見つけた。アプリの接触通知ログのデータを解析し、一定期間に陽性登録者が自分の行動圏にどれくらいいたかが分かるツールで、COCOAより広範囲で分析できるという。
 スマホからデータをコピーし、ログチェッカーのウェブページに貼り付けるだけ。早速使ってみると「新規陽性登録者が近くにいた記録が175件確認されました」。ログチェッカーはブルートゥースの電波が届く範囲(約10~30メートル、場合によっては50メートル以上)に1~30分間いた場合を1件とカウントする。15日が最も多い85件、COCOAの通知がない14日も39件と複数の日で確認された。

 

陰性で一安心 周囲に広げないためにもツールの活用を

 お盆期間中の前後1週間で人と話す機会は多くあったものの、誰かと一緒に食事をしたり、マスクを外して話したりはしていない。多少の疲れはあったが発熱やせきなどの症状はなかった。念のため、19日に徳島駅前のPCR検査センターで検査を受けた。待ち時間も含めて15分程度で終了。検査人数が増えているため、結果の通知には「今だと大体3日ぐらい」と言われたが、検査した日の翌々日、日付が変わってすぐにメールで届いた。「陰性」の文字を見てほっと一息ついた。

 

厚労省のHPより

 2020年6月にCOCOAの運用が始まってから2年が過ぎた。当初は不具合が相次ぎ不評だったが、感染拡大に伴い利用者は徐々に増えている。8月19日時点のダウンロード件数は3963万件、陽性登録件数は283万2275件。全国の感染者数の登録割合は2%(21年6月)から7%に上がり、利用が少しずつ広がっているようだ。
 日頃の対策は心がけていたが、万が一の場合が頭をよぎり不安になった。ただの疲労かもしれない、風邪かもしれない。検査を受けるかどうか迷った際、こうしたツールは一つの判断基準になる。移動制限のないこの夏、久しぶりの家族との再会や友人との旅行を楽しんだ人も多いだろう。周囲に感染を広げないためにも、できる限りの対策を講じてほしい。