西日本豪雨で記録的な雨に見舞われた徳島県では3日から7日にかけ、5市町で避難勧告や避難指示が延べ22回出された。異例の長時間にわたる大雨で地域の災害危険度が刻々と変わる中、阿南市と那賀町の一部地域には未明に避難勧告が発令された。これに対し、一部住民から「夜遅くに発表されると、特に高齢者は避難しづらい」などと困惑する声も上がっており、避難を促すタイミングの難しさが改めて浮き彫りになっている。

 県内では台風の影響で雨が強まった3日午後に海陽町の一部地区で避難勧告が出されたのを皮切りに、6日午前までに三好、東みよし、那賀、阿南の4市町が避難勧告を発令。同日午後には土砂災害の恐れがあるなどとして三好市の一部に避難指示が出された。

 阿南市の山沿いや那賀町の木沢、上那賀地区などでは同日午前2時35分から同4時までの間に、避難勧告が発令された。

 両市町は徳島地方気象台などから土砂災害警戒情報や記録的短時間大雨情報が発表されたのを受け、過去の災害事例などを参考に避難勧告を出すかどうか検討。緊急を要するとして未明の発令となった。

 発令された地区の住民からは「もっと早い時間帯に出せなかったのか」との声が上がる。

 木沢地区の桑高仁志さん(39)=那賀町寺内、ゲストハウス経営=は「夜遅くに発令されると、特に高齢者は避難しづらい。高齢化率の高い地域ではなおさら、発令する時間帯に気を配ってほしい」と訴える。

 町の担当者は5日午後5時に高齢者らの早期避難を呼び掛ける避難準備情報を町全域に出していたことを挙げ「事前に注意喚起していたので問題はなかった」としながらも「今回の場合も木沢などでは一時、かなりの雨に見舞われたが鷲敷ではあまり降らなかった。局所的な豪雨が増え、予測が非常に難しくなっている。町としてもできるだけ早く対応したいのだが…」と頭を悩ませる。

 避難情報を巡っては、自治体間で発表のタイミングに違いも見られた。

 那賀町や三好市、海陽町は初めて避難情報を出す場合は暗い時間帯を避けるようにしている。三好市は、5日未明に県と徳島地方気象台から土砂災害警戒情報が山城町など3地区に出されたが、周囲はまだ暗く避難には危険が伴うと判断し、明るくなる午前6時まで発表を待った。

 一方、阿南市は「避難情報は緊急性が認められた時点で時間帯を問わず発表する」とのスタンスだ。「夜が明けてからでは手遅れになる」と、6日未明に避難準備情報や避難勧告を出した。

 徳島大環境防災研究センターの中野晋教授(地域防災学)は「避難情報の発表は、自治体が自らのルールに従うのが基本」とした上で「避難勧告は早め早めに出す、というのが全国的な傾向。気象庁から提供される気象情報も拡充されており、行政は発表基準が今のままでいいのか、常に見直すことが大事だ」と話している。

 避難情報 災害が発生もしくは発生の恐れがある場合に災害対策基本法や国の指針に基づき、原則市町村長が発表する。住民に対して避難準備を促すとともに高齢者や障害者らに早期避難を呼び掛ける「避難準備情報」、住民に避難を勧める「避難勧告」、避難勧告よりも強く避難を求める「避難指示」がある。緊急性は避難準備情報→避難勧告→避難指示の順に高い。従わなくても罰則はない。