徳島新聞社は9月1日、小中学校向けに開発した新聞活用学習支援サイト「あわスタ」を公開します。あわスタは、国の「GIGAスクール構想」のもと、小中学生に1台ずつ配布されたタブレット端末での使用を想定しています。徳島新聞の記事を調べて読むことができる「記事アーカイブ」、新聞記事を活用した「教科書対応ワークシート」の二つが大きな柱で、いろいろな職業を紹介するコーナー「とくしまのおしごと」もあります。アーカイブとワークシートの頭文字をとって「あわスタ」と命名しました。アーカイブでは、教育現場で使いやすい記事を地域やジャンルで分類。公開時は約4000本の記事が閲覧でき、順次増やしていきます。教員専用のページでは、国語と社会の教科書対応ワークシートを提供します。あわスタの機能や先行導入の様子を紹介します。

【アーカイブ】児童生徒が簡単検索

 「記事アーカイブ」は、徳島新聞の記事の中から知りたい情報を探しやすいように整理して保管した「記事の倉庫」です。今回、「あわスタ」の開発に合わせて新たに作りました。子どもたちの情報収集力の向上などにご活用ください。

 学習に使用できそうな過去2年間の記事を中心に、約4千本が9月1日時点で閲覧可能です。

 記事は、地域別、ジャンル・テーマ別に整理して保管しています。「ちいきをえらぶ」では県内24市町村のほか、「徳島県」「日本」「世界」に分類。ジャンル・テーマから絞り込める「ことばからえらぶ」は、「まちづくり」「SDGs」「平和」「人権」など、教育現場で使っていただきやすい項目ごとに仕分けました。

 それぞれのタブをタップすると、仕分けられた記事一覧が閲覧できます。地域とジャンル・テーマを組み合わせて絞り込んで検索できるので、知りたい情報に容易にたどり着くことができます。

 キーワード検索も可能です。児童生徒のレベルに応じて調べられるように、漢字でもひらがなでも検索できるようにしました。

 読みたい記事をタップすると、実際の紙面に掲載された切り抜き画像と、テキストのみの2通りが表示されます。テキストはボタン操作一つでよみがな表示の有無が選択でき、低学年の児童でも全ての記事をルビ付きで読むことができます。

 記事の切り抜き画像は、スクリーンショット(画面保存)のほか、PDFやJPEG形式で鮮明に保存でき、ノート共有ソフトやビデオ会議システムに取り込むなどして使うこともできます。テキストをよみがな付きでコピーすることも可能です。発表資料や教員の教材づくりにもお使いいただけます。

【とくしまのおしごと】暮らし支える職業紹介

 職業紹介のページ「とくしまのおしごと」は、暮らしを支えるさまざまな仕事や徳島県の主要産業に焦点を当てます。取り上げた職業の概要のほか、タイムテーブルをもとに1日の働き方や働く人の思いを紹介し、ニュース記事だけでは伝えきれない内容をお伝えします。児童生徒用ページから閲覧可能で、キャリア教育にもご活用いただけます。中身については、今後充実させていく予定です。

【ワークシート】記事 生きた教材に

 あわスタのワークシートの特長は、県内で採用されている教科書に準じて、学年別、教科書別に作成しているところです。公開時は、国語と社会を提供します。

 新聞記事が活用できる単元を選び、国語は野口幸司・徳島新聞NIEコーディネーター、社会は井上奈穂・鳴門教育大学大学院准教授がそれぞれ作りました。教員専用ページから利用することができます。

 ワークシートは、基本的に「問題」「記入例」「指導のヒント」がセットになっており、問題は授業の実態に合わせて加工することも可能です。

 国語は、教科書教材に関連した新聞記事を使うことで、学習内容をより身近に感じられるようにしています。調べたことをまとめたり自分の意見を書いたりする教材にも対応しています。

 社会は、探究的に学習するという教科の特性が生きるよう、アーカイブで探した新聞記事から課題を見つけることを基本にしています。検索のキーワードを示しているのも特長です。

 あわスタのワークシートは、プリントして使用することも可能ですが、タブレット端末での使用を前提に開発しています。ノート共有ソフトなどに取り込めば、使いやすい大きさに拡大したり縮小したりすることができます。各自の記入状況をモニター機能で把握し、注目させたい考えや対立する意見を全員に表示して共有することで学びが深まります。1人1台端末を生かすワークシートの提供で、教育分野でのDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を支援します。

【社会】情報を読み取る力養う
井上奈穂・鳴門教育大学大学院 学校教育研究科准教授

 2017、18年に告示された現行の学習指導要領では、予測困難な時代における持続可能な社会の担い手の育成が掲げられています。それは、教科書や資料集といった用意されたものを吸収する受動的な子どもではなく、自ら問いを見つけ、その解決策を考察・構想するといった能動的な子どもの育成ともいえます。社会科のワークシートでは、能動的な子どもの育成を念頭に置き、一つ一つの記事の内容ではなく、データベースとしての「あわスタ」の特性を生かし、キーワードによる「検索」と「まとめ」を中心とした学習活動を提案しています。

 今は、1人1台の端末環境が整っているので、そのままネット検索すればよいという指摘もあると思います。しかし、ネット上にはさまざまな情報が散在し、善しあしも含め、その質はさまざまです。多様かつ膨大な情報に触れる前に、新聞記事という一定の質が担保された情報の「検索」や「まとめ」といった活動を行うことは、インターネット上のさまざまな情報を適切に読み取る力の基礎につながるといえるでしょう。

 社会科では、ワークシートだけでなく、解説も見てほしいと思います。解説には、学習指導要領に示されている視点や見方・考え方から整理した検索のキーワード、指導のヒントも示しています。子どもの自主性を生かしながら、社会科の目標につながる授業の場づくりにぜひ活用してください。

【国語】意見や考え形成後押し
野口幸司・徳島新聞NIEコーディネーター

 国語のワークシートは、教科書に沿った学習を充実させるため、次のような内容の記事を選んでいます。

 ①地域の様子や行事、季節の風物
 ②原因と結果の関係性がはっきりしているもの
 ③自分の意見を持つための材料になる社会事象などを報じたもの

 県内公立小中学校で使われている教科書には「季節の言葉」「季節の足音」「季節のしおり」という、季節の風物を通して言語感覚を養う小単元があります。地域の行事や風物の新聞記事を使うことで、教科書の内容をより身近に引き寄せて学ぶことができます。

 現行の教科書は、情報処理能力の育成を重視しており、原因と結果などの関係性の読み取り方を学ぶ教材が配列されています。新聞記事は、結論が先に述べられており、その原因との関係性を読み取るのに最適な教材となります。

 現在、中学校はもちろん小学校でも自分の考えを明確にして文章を書く力が求められています。意見や考えの基になる情報が必要ですが、教科書の資料だけでは不十分です。新聞記事から身近で新しい話題を取り上げることで、意見や考えの形成を後押しします。

 阿波っ子タイムズのコラム「こども鳴潮」を使った要約や日記、書き写しのシートも用意しました。社会の話題に触れながら、読解力や筆写力を育成することができます。継続して行うことで着実に力がつきます。朝の活動や宿題などでお使いください。

【鳴門教育大付属中が実践】信頼性高い情報が手軽に、国内外のニュース細かく分類

 鳴門教育大付属中学校(徳島市)では、新聞活用学習支援サイト「あわスタ」の9月からの本格活用に先立ち、夏休み前に1年生(4学級136人)に先行導入しました。社会科の授業や総合学習の調べ物などで使い始めており、生徒からは「知りたい情報がいち早く手に入る」「地元の詳しい情報が役に立つ」といった感想が寄せられています。

担任教諭から「あわスタ」の説明を受ける1年2組の生徒=7月15日、鳴門教育大付属中

 1年生は9月から、総合学習で「SDGs」について学びます。その事前学習として情報収集などにあわスタを活用。7月中旬に使い方の説明を受けた後、夏休み期間中、記事アーカイブを使ってSDGsに関する話題を探し、知識を広げました。

 「SDGsが世界規模での取り組みであることを知りました」と語るのは木村千紗さん(12)。あわスタの「SDGs」のボタンを押すと、地域の「子ども食堂」の話題から国連の気候変動対策のニュースまで、国内外の何百件もの記事がヒットしました。木村さんは「地元の取り組みも詳しく載っていて手早く探せるし、繰り返し閲覧できて便利」と言います。

 さらに一つ一つの記事には「人権」「防災」「環境」といったジャンルやテーマが表示されており、「SDGsの記事が防災や福祉分野ともつながっていることがわかり、知識が深まりました」と活用の手応えを感じているようです。

 杜咲良(もり・さくら)さん(13)は、あわスタの検索で、日本の女性の役員登用率の低さを指摘する記事に出合い、夏休みの課題のテーマをジェンダー平等に決めました。自宅では全国紙も読んでいて、今後は気になった記事を見つけたら、あわスタで同様の記事を探し、読み比べてみたいとも。「ネットなどと違って情報の信頼性が高いのがいい。社会の出来事や授業で、疑問に思ったことなどを調べるために活用したい」。

 一方、教員も教材作りや授業研究にあわスタを活用し始めています。大谷啓子教諭(社会科)は、あわスタからダウンロードした新聞記事に設問をつけてワークシートを作成。7月20日、地理の授業で生徒のタブレット端末に記事を送信し、ワークシートは紙に印刷して副教材として使いました。これまでも書籍や紙の新聞を授業に活用してきた大谷教諭は「副教材の題材が増えました。ピンポイントで目当ての記事が探せるので、教材研究の時間が短縮できます」と話していました。

あわスタを活用しながら地理の授業を受ける1年1組の生徒=7月20日、鳴門教育大付属中

導入は自治体単位/来年度まで無償

 あわスタは原則、自治体単位での導入をお願いしています。来年度まではお試し期間として無償とし、2024年度から有償化します。

 導入を決めていただいた自治体には、各校で使用する児童生徒用と教員用のパスワードなどをお送りしています。使い方などに関しては、随時オンライン説明会を開催するほか、対面での説明会開催の希望も受け付けています。

 問い合わせは、徳島新聞社デジタル推進局デジタルマーケティング部、電話088(655)7208、または徳島新聞メディアNIE・NIB推進室、電話088(655)7418。