【写真左】鳴門市で発見されたS字状アンモナイト・プラビトセラスの化石(県立博物館提供)【写真右】プラビトセラスの顎(東京大提供)

【写真左】鳴門市で発見されたS字状アンモナイト・プラビトセラスの化石(県立博物館提供)【写真右】プラビトセラスの顎(東京大提供)

 徳島県立博物館は10日、鳴門市と兵庫県南あわじ市の中生代白亜紀の地層から、S字状アンモナイト「プラビトセラス・シグモイダーレ」の顎器の化石が完全な状態で見つかったと発表した。顎器が上下そろった状態で出てきたのは初めてで、食性など生態を解明する手掛かりになる。この発見は米国学術誌の電子版に掲載された。

 プラビトセラスは、約7300万年前の白亜紀後期に生息していたアンモナイトの一種。化石は日本でしか見つかっていない。タコやイカと同じ頭足類で全長約30センチ。殻がS字状になっている。

 プラビトセラスの顎器や殻の詳しい形は、これまで謎に包まれていた。県立博物館の辻野泰之学芸員が2007年に南あわじ市で採集した化石と、13年に石井町の化石愛好家が鳴門市で見つけた化石を調べたところ、2個体とも顎器が完全な状態で殻の中にあった。

 東京大や北九州市立自然史・歴史博物館との共同研究の結果、顎器は上下がほぼ同じ大きさで、いずれも先端がとがっていることが分かった。下顎には表面に薄い石灰質の層があった。

 辻野学芸員は「動物プランクトンより大きな餌をかみちぎっていた可能性がある。意義深い発見になった」と話している。

 この化石は、17日から県立博物館で始まる部門展示「白亜紀の化石」で公開される。