「全国の気温を観測する約900カ所のうち140カ所で40度を超えました」「日本の南の海上に最大瞬間風速90メートルの台風があります。家屋が倒壊するような風が吹くスーパー台風です」―。

 今から78年後の2100年夏、天気予報のキャスターが発する言葉だ。地球温暖化対策が実らず、平均気温が最大4・8度上昇した未来を描き出している。環境省が制作し、ウェブサイトで公開している動画「2100年未来の天気予報」を見てほしい。

 風速90メートルの台風とはどれほどの威力なのか。実は既に同規模の台風は生まれている。13年にフィリピン中部を襲った台風30号は、最大風速65メートル、最大瞬間風速90メートル。暴風雨に加えて高潮が街を襲い、多くの住宅が倒壊。死者・行方不明者は7千人を超えた。

 19年9月に千葉市付近に上陸した房総半島台風(台風15号)は、千葉で最大風速35・9メートル、最大瞬間風速57・5メートルを観測し、いずれも同地点の観測史上1位を更新した。この風速でも死者が9人出て、千葉県を中心に多くの建物が被害に遭った。屋根がブルーシートに覆われた家屋が連なる写真を覚えている人も多いだろう。停電が続いた地域では熱中症と見られる死者も相次いだ。

 気象庁によると、日本の平均気温は100年当たり1・28度上昇している。海水温が上昇すると台風は巨大化し、気温が上がるほど大気中に含まれる水蒸気量は増え、豪雨を降らせる。

 18年7月の西日本豪雨は平成に入って以降で初めて100人を超える死者を出し、「平成最悪の水害」となった。徳島県内でも三好市や那賀町で土砂災害が相次ぎ、三好市山城町では今も避難生活を送る被災者がいる。気象庁は18年8月、個別の豪雨について初めて「地球温暖化に伴う気温の上昇と水蒸気量の増加」が一因との見解を公表した。

 激甚化した水害は毎年のように日本、そして世界を襲っている。世界は今、50年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル社会」の実現を目指している。一人一人が生活スタイルを見直せば、まだ2100年の天気予報は変えられる。

 今日は「防災の日」。いつ起きてもおかしくない水害に、どう対応すべきか。雨雲の動きが分かるアプリをスマートフォンに入れておく、ハザードマップを確認する、備蓄品を買う―。それぞれがまず一歩、備えを進めたい。

ここ10年の主な水害

【2012年7月 九州北部豪雨】
 熊本、福岡、大分の3県を中心に、1時間に100ミリ前後の猛烈な雨が観測された。河川の氾濫や土砂災害が発生し、3県の死者・行方不明者32人。

【2013年10月 台風26号】
 伊豆諸島の伊豆大島では記録的な大雨が降り、土石流が発生した。伊豆大島などで43人の死者・行方不明者が出た。

台風11号で浸水した住宅街から住民を救助する救急隊員=2014年8月、那賀町和食郷

【2014年8月 台風11号】
 高知県安芸市付近に上陸し、四国を縦断。徳島県内では那賀川が氾濫し、那賀町鷲敷地区と阿南市加茂谷地区で大規模な浸水被害が発生、山間部では土砂災害が相次いだ。

【2014年8月 広島土砂災害】
 広島市の一部地域への記録的集中豪雨で土石流が発生し、77人が犠牲になった(災害関連死を含む)。新興住宅地での土砂災害とあって、都市計画の在り方なども問われた。このときの豪雨による全国の死者・行方不明者は91人。

【2015年9月 関東・東北豪雨】
 茨城県常総市の鬼怒川で堤防が決壊、広範囲に氾濫した。死者・行方不明者20人。

【2016年8月 台風7,9,10,11号】
 北海道、岩手県で記録的豪雨。死者・行方不明者31人。岩手県岩泉町の高齢者施設で9人が犠牲になった。

【2017年7月 九州北部豪雨】
 福岡、大分両県で大規模な土砂災害が相次いだほか、河川が氾濫した。死者・行方不明者は両県で44人。

【2018年6、7月 西日本豪雨】
 死者・行方不明者は271人に上った。平成に入ってから初の死者が100人を超える水害。7月5日から8日にかけ、東海地方から九州までの広範囲で16の線状降水帯が形成されている。徳島県内では三好市と那賀町で土砂崩れによる孤立世帯が出た。

西日本豪雨で全壊した納屋=2018年7月、三好市山城町上名

【2018年9月 台風21号】
 非常に強い勢力を保ったまま、徳島県南部に上陸し、近畿地方を縦断。近畿地方を中心に14人が犠牲となり、関西国際空港の滑走路が浸水するなどの高潮被害が出た。

【2019年9月 房総半島台風】
 千葉市付近に上陸。千葉市では最大風速35.9m/s、最大瞬間風速57.5m/sを観測し、いずれも観測史上1位を更新した。東京都と千葉県で死者9人が出た。千葉県内を中心に4000棟を超える住宅が全半壊。停電や断水が続いた地域もあり、熱中症とみられる症状で亡くなる人も相次いだ。

【2019年10月 東日本台風】
 関東・東北地方を中心に河川の氾濫と土砂災害が発生し、107人の死者・行方不明者が出た。

【2020年7月 熊本豪雨】
 熊本県内の死者(災害関連死含む)・行方不明者は69人。球磨村の特別養護老人ホームの入所者14人も犠牲になった。球磨川の13カ所で氾濫が発生。その後、白紙撤回されていた川辺川ダム整備計画が復活した。このときの豪雨による全国の死者・行方不明者は86人。

【2021年9月 徳島県南部の大雨】
 徳島県南部上空に線状降水帯が形成され、海陽町では観測史上最大となる1時間に120ミリの猛烈な雨を観測。住宅の浸水被害などが出た。

大雨で冠水した国道55号=2021年9月、海陽町那佐

<関連記事>
西日本豪雨の浸水で犠牲ゼロの岡山県総社市下原地区 鍵は地元の自主防災組織
水害対策を住民の手で 治水の手法「田んぼダム」とは