徳島のゴールの前に立ちはだかる185センチの長身。強烈なシュートを両手でがっちり受け止め、時には大柄な外国人選手と激しく体をぶつけながら競り合う。「常にチームを助けるプレーがしたい」と、最後尾から仲間を鼓舞し続けるのがGK梶川裕嗣だ。
J1名古屋のお膝元である愛知県豊田市出身の26歳。2人の兄の影響で小学校入学前後にサッカーを始め、セレクションに誘われて名古屋の下部組織に加入した。
当初はFWなどでプレーしていたが、5年生の時、愛知県内の小学生チームが集う大会でGKとして出場し、PKを次々止めた。「それがすごく楽しくて。そこから本格的にGKをし始めた」
GKとしての基礎が形作られたのは中学の3年間という。ジュニアユースでコーチだった元名古屋GKの伊藤裕二さん(53)から構え方や位置取り、セービングの技術など全てを学んだ。「練習するほど成長を実感した。3年生の頃は他のキーパーを見て、もっとこうしたらいいのにと足りない所が分かるくらいだった」と振り返る。
GKはゴールに直結するポジションだけに苦しい仕事だ。「得点シーンってGKがやられてる場面ですから。動画のベストゴール集なんて見たいと思わない」と苦笑い。スーパーセーブはミスと紙一重のプレーだからこそ「役割を果たせた時の喜びは大きいし、失点しても引きずらずに次に備える気持ちの強さが重要」と力説する。
湘南でプロデビューし2017年に徳島へ期限付き移籍。14試合に出場したがJ1昇格の目標は果たせなかった。「貢献できなかったという思いが強くて。徳島のためにさらに頑張りたいという気持ち」で今季の完全移籍を決断した。
現在の順位や成績には悔しい思いでいっぱいだ。特に得点が入らず競り負けた試合は「無失点でチームを支えられず、責任を感じる」と唇をかむ。その上で「後半戦で巻き返すために、もっと勝負強さを磨きたい」と奮起を誓った。