日本と欧州連合(EU)が経済連携協定(EPA)に署名し、来年3月までの発効を目指すことで一致した。発効すれば、世界の国内総生産(GDP)の3割、貿易総額では4割を占める世界最大級の自由貿易圏の誕生となる。

 トランプ米大統領の保護主義的な通商政策に対し、ルールに基づく自由貿易の重要性を訴える意義は大きい。

 協定では、双方の貿易品目の9割超で関税が撤廃される。政府は、実質GDPを5兆円(約1%)押し上げ、約29万人の新規雇用を生む効果があると試算する。

 農・工業などの幅広い分野で、メリットを最大限に生かしてもらいたい。

 日欧EPAは、2013年に交渉が始まった。双方が関税撤廃に慎重な姿勢を崩さなかったため、足踏み状態が続いていたが、16年に決まった英国のEU離脱や17年のトランプ政権の発足で状況が一変した。保護主義台頭への強い危機感が歩み寄りを急がせたようだ。

 協定により、チーズやワインなどの輸入食品は値下がりが見込まれ、消費者には恩恵が広がる。また、EUが高関税を維持している自動車は、関税の引き下げで輸出拡大が期待できる。

 半面、国内農業は厳しい競争にさらされるため、不安を抱く農家は少なくない。地域の実情に即した、きめ細かな対策が求められよう。

 日本は、米国の保護政策への対応として、多国間協定による「防波堤」づくりを矢継ぎ早に進めている。

 一つは、米国を除く11カ国が署名した環太平洋連携協定(TPP)。日本は既に国内手続きを終え、参加国の拡大も視野に入れる。

 もう一つは、日中や東南アジア諸国連合(ASEAN)など16カ国が参加する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)で、年内の大筋合意を目指す。

 米国の圧力には、多国間の連携拡大で対抗するしかあるまい。ただ、気になるのは、日欧でルール違反への対応が違っていることだ。

 EUは、米国による鉄鋼輸入制限と中国の知的財産侵害を、それぞれ世界貿易機関(WTO)に提訴した。しかし、日本は米中と波風を立てない方が得策との考えからか、提訴していない。

 貿易秩序を守ることを優先させるなら、日本もEUと同様にWTOに提訴するのが筋ではないか。

 多国間協定で難しいのは、各国の思惑が絡み、往々にして足並みが乱れることだ。対米包囲網を強めるためにも協調が欠かせない。

 連携によって各国の経済成長が高まれば、保護主義政策の不利益がクローズアップされることになる。米国内からトランプ氏に政策変更を求める声も上がってこよう。
 自由貿易の世界に米国を引き戻す。そのためには、日欧EPAによる具体的な果実をみせる必要がある。