今から70年ほど前に産婦人科・内科として開院した、阿波市の旧吉川医院。2008年の閉院以来15年ほど空き家となっていたが、22年3月、複合施設として新たな時を刻みはじめた。

 鉄筋コンクリートの新館と、木造の旧館、看護棟からなる旧吉川医院。診察室や病室だった18の空間に、さまざまなものづくりを行う人々が集う。新館の1階には、木工や革の工房、ブロンプトンポタリングの拠点など、2階には、アートのアトリエ、IT企業のサテライトオフィス、インテリアコーディネーターの事務所などが集合。木造の看護棟にも、おにぎりスタンドやロースタリー、アンティークショップなど個性豊かな面々が揃う。ガレージには8月19日より、無添加ベーカリー「fior di farina(フィオーレ デ ファリーナ)」がオープン。敷地内にある建物は、一つたりとも余すことなく活用されている。

せり出すアールの窓が印象的な新館。

 こうした複合施設の多くは、各部屋のリノベーションを済ませてから利用者に貸し出すのが一般的だという。しかし「ART Village!」では、利用者自らがDIYで各部屋をリノベーション。こうすることで、運営者は改修費を抑えられ、利用者は自分好みの空間を作れるのだ。「これぐらいの規模の建物は、古民家と比べて大きいから、一個人ではなかなか手をつけられない。でも、この仕組みでうまく稼働すれば、空き施設活用のいい例になるんじゃないかな」と、運営の舵を取る宗本恵一さん(72・徳島市出身)も期待を寄せる。

病院の趣を残した各部屋に、工房や事務所が入居する。

 木造の旧院にオープンしたばかりのカフェ「A BAGEL(エーベーグル)」を訪ねてみた。扉を開くと、受付だったであろうカウンターがお出迎え。そこにきんぴらチーズやクランベリーホワイトといった、ユニークでカラフルなベーグルが並ぶ。「コンセプトは“シェアするベーグル”。一緒にいる人や明日の自分とシェアしてもらえるよう、とにかく具だくさんにしています」と微笑む店主。これから、カヌレなどの焼き菓子もお目見え予定だ。

木造の旧館をリノベーション。

 もうすぐ、かつての居住棟を宿にするリノベーションが始まるなど、現在進行形で変化を続ける「ART Village!」。これからの展開を楽しみに見守りたい。

A-BAGEL 070-8559-9155/10:00~14:00(売切まで)/月曜、火曜、祝日休

ランチのハンバーグセット(1595円/10:00~14:00)。黒毛和牛を使った自家製ハンバーグをベーグルでサンド。

ART Village!(アート ビレッジ)
徳島県阿波市吉野町柿原字原261-1
080-3920-3826
営業日時は各店によって異なる

駐車場:あり
多機能トイレ:なし
Wi-Fi:あり
キッズスペース:なし
開業:2022年3月