阿南工業高校野球部の最後の夏が21日、終わった。阿南工業高校は今年4月に新野高校と統合して新たに阿南光高校が誕生した。2、3年生が在籍する阿南工業は1年生だけの阿南光との合同チームで全国野球選手権徳島大会に出場。この日、2回戦で脇町高校に惜敗した。
合同チームとはいえ、ベンチ入りのメンバーは全て2、3年生のため阿南工業のユニフォームを着た選手たちで挑んだ。阿南光のユニフォームを着た1年生はスタンドから懸命に声援を送った。
試合後、球場の外に出てきた選手たちを待ち構えていたのは、大勢の保護者やOBらだった。1列に並んだ選手を代表して西崎光信主将が「阿南工業の最後の夏は悔しい結果に 終わってしまいましたが、阿南光の選手たちが来年きっと、この悔しさを晴らせてくれます」とあいさつ。続いて福岡秀祐監督が「50年以上に及ぶ阿南工業高校野球部の歴史は幕を閉じますが、引き続き阿南光を応援してください」と述べた。
この後、監督と選手たちの「最後のミーテイング」が行われた。福岡監督は時折声を詰まらせながら「悔しさは残るが、これまでやってきた努力は必ず返ってくる」「3年生は、3年間立派に成長したと思う。阿南工業の最後の夏にふさわしい学年だった」と言葉をつなぐ。そして「最後に言う」と切り出す。「野球人はユニフォームを脱いだ後が、本当の姿であり人間の価値が見える。ユニフォームを着ている時は誰やって頑張る。脱いだ後にどれだけ頑張れるかや。これからが見せ所やぞ。育ててもらった阿南工業高校のユニフォームに恥じないように、やっていこう」と力を込め、締めくくった。福岡監督は3年生一人一人の元に足を運んでがっちり握手して言葉を掛ける。選手の目には涙があふれた。
阿南工業高校野球部は、学校が開校した1962年に軟式野球部として創部。翌63年に硬式野球部に移行した。OBにはプロ野球の巨人で活躍した條辺剛さんがいる。條辺さんは引退後、埼玉県でうどん店を経営しており、徳島大会の前には徳島新聞社の取材に応じ母校にエールを送ってくれていた。
「最後のミーティング」が終わった後、阿南工業高校のユニフォームで記念撮影が行われた。半世紀以上にわたって球児たちが袖を通したユニフォームも、もう見ることはないのだろう。
明日22日は、阿南工業と同様、最後の夏に臨んでいる新野高校が2回戦に挑む。(#夕刊編集部)