今回はゼロ・ウェイストからは少し離れ、上勝町での情報交換の方法について書いてもらいました。口コミによる情報伝達が発達しているといわれる地方ですが、この口コミもデジタル化しているようです。

 「キンコンカンコーン」。チャイムが鳴る。午前7時と午後5時に上勝町では町内放送が流れる。通行止めや夜間断水のお知らせ、各種行事の開催などが、町内一円に知らされる。この町で暮らす上では必要な情報だ。

 しかし、時には聞き逃してしまうことがある。町内放送が聞き取りづらいこともある。大抵の放送内容は、月に一度発行される広報誌に載っている情報だ。それを時期ごとに放送でも知らせてくれる。聞き逃しても広報誌を見れば詳細は確認できる。しかし、台風の避難情報や熱中症警戒アラートなど、通常の放送時間外に流れる情報もある。聞き逃せば不安が募る。暮らしの中での、ちょっとしたストレスだった。

 それが今では、町内放送で流れる内容が文章でスマホに届く。聞き逃しても問題ない。上勝町公式LINEに登録し、情報を受け取るようにしただけなのだが、少しの変化でこれほど安心感が違うものか。まだ始まって間もないサービスであるが、その恩恵を一住民として実感している。

上勝町の町内放送が届くLINE を紹介するチラシ

田舎で生きるために必要だった人とのつながり

 1990年代から2000年代にかけて、情報化は急速に進んだ。インターネットの普及により、どこにいても携帯電話やパソコンを使って瞬時に多くの情報を得られるようになり、産業構造も個人のライフスタイルも大きく変化した。私も日々の生活で、スマホのニュースアプリを使い、情報を入手している。その情報を使ってコミュニケーションをスムーズにしたり、重要な決断を下したりしている。情報を得るだけでなく、SNSなどでカフェや個人の体験などの情報を発信する側に立つこともある。

 田舎においては、情報は「生命線」と言ってもいい。先祖たちが残した「知恵」も情報の一つ。どの時期に何をしておくべきなのか、文献として残っているものは少なく、多くは親が子にやって見せ、やらせてみて伝えられてきた。または、地域コミュニティーの中で「寄り合い」など定期的に開かれる会議に集まって情報交換していた。

 「誰とつながっているか」で、得られる情報が変わる。常日頃からつながりをつくっておくことが重要だった。農作業や子守りを互いに手伝い、飲み会に参加することは、生きるために必要なことであり、現代風に言えば「リスクマネジメント(危機回避)」の一つだった。

進む田舎の情報化

  冒頭で紹介した町内放送のLINE版は、町による放送を住民が受け取るスタイル。これに加え、住民が誰でも投稿できるLINEグループも今年2月に始まった。「誰一人取り残さない持続可能な町」にする方策を話し合う「上勝町SDGs推進委員会」で、参加した町職員が提案したのがきっかけだ。「自ら情報を集めに行かなくとも、最新情報が手元に入るシステムが欲しい。SNSならすぐ実現できるのでは」との考えでスタートし、口コミで加わる町民が少しずつ増え、現在では約80人が参加している。

 やりとりしているのは、上勝町での暮らしに役立つ情報ばかりだ。冬にはさまざまな地区に住んでいる人たちが路面凍結の状況を写真に撮って共有し、事故防止を呼び掛ける。桜や棚田の見頃を伝える投稿もある。そのほか、イベントやアルバイト求人に関するお知らせから蜂の撃退方法の相談、移住者の紹介まで内容は多岐にわたる。

 小さな町に暮らす人々が活用する場であり、ある程度顔見知りの人たちが使うためだろうか、匿名性の高い場ではあっても不快に思う投稿はこれまでに一度もない。

今年2月の大雪の日に共有された路面情報。各地区の状況を確認できる

  情報を発信する方法もたくさんある。私は友人らと上勝での暮らしを発信するウェブマガジン「上勝クラシカル」と、ラジオ番組「いんぐり ちんぐり」を制作し、オンラインで配信している。

上勝情報ラジオ「いんぐり ちんぐり」の収録の様子。「いんぐり ちんぐり」は阿波弁で「不揃いな、様々な」という意味をもつ

 ウェブマガジンは、2018年12月に開始。上勝町で暮らす3名の若者たちが「今」を発信し、記録することを目的として始まった。晩茶づくりなど町の伝統や子育てなど暮らしに関すること、また抱える悩みなどもつづっている。

 ラジオ番組を始めたのは、高齢者がラジオを聴きながら農作業をしている様子を見たことがきっかけだった。当初は、情報のやりとりで余剰作物を交換してフードロスを防いだり、防災に役立てたりしたいと考えていた。

 現在はオンライン配信が中心だが、「聞いたよ」と声をかけてくれる高齢の方もいる。音声という、文字よりも人柄が出やすい伝え方で、上勝に関わって仕事をしている人を紹介したり、小学生をゲストに招いて話を聞いたりしている。

 以前紹介した滞在型教育プログラム「INOW」を運営するカナダ人2人も、英語で上勝の暮らしを発信する番組「BANCHA TALKS」を世界に向けて発信している。

 誰にでも同時に等しく行き渡る情報は、暮らしに安心感をもたらす。一方で、便利なサービスに頼りすぎてはいけないとも感じている。寄って話して分かち合う。そんな時間をむげにするつもりはない。つながりの持ち方は少しずつ変化している。これまでの在り方を否定するのではなく、更新しながら、皆が心地よく暮らす方法を模索できたらと思う。

東輝実(あずま・てるみ) 1988年生まれ。上勝町出身。関西学院大卒業後、町へ帰郷し、夫らと合同会社RDNDを設立し、カフェ・ポールスターを経営。NPO法人ゼロ・ウェイストアカデミー事務局長を経て、現在は仲間とともに上勝町で滞在型教育プログラム「INOW(イノウ)」を展開している。

 

東さんのコラム「Rethink 上勝町のゼロ・ウェイスト」は毎月第3金曜日に公開します。