カジノ解禁を含む統合型リゾート施設(IR)整備法が成立した。

 衆参両院とも自民、公明両党が、数の力で押し切った。

 西日本豪雨への対応が求められる状況で、参院内閣委員会の審議にIR整備法担当の石井啓一国土交通相が出席したのは、適切な判断だったのだろうか。

 なぜ、IR整備法の審議を見送って国交相として災害対応に専念しなかったのか。

 IR整備法では、カジノを刑法の賭博罪の適用対象から外して解禁する。

 最も懸念されるのはギャンブル依存症だ。

 日本人には入場料6千円を徴収し、最大で「週3回、月10回」に入場を制限する規定が設けられている。

 これが利用者の歯止めになるのか。衆参でわずか40時間余りの審議では、国民は不安を解消できなかっただろう。

 カジノの運営を巡る細部の詰めも今後の焦点である。カジノ事業者には、利用客への金銭貸し付け業務を認めるが、その仕組みを含む331項目は、国会審議が不要な政省令に委ねられた。

 具体的には、ルーレット、スロットマシンなどゲームの種類のほか、貸し付け対象のとなる「富裕層」の定義などが定められる予定だ。

 利用者の保護よりも、事業者の利便性が重視されることはないのだろうか。政府の対応次第では、依存症対策や規制の実効性が弱まりかねないとの懸念がある。

 全国3カ所を上限に整備されるIRの整備区域は、国が立地を希望する都道府県や政令指定都市から計画書の提出を受けて、経済効果などを評価した上で選ぶ。第1弾のIR開業は2020年代半ばが有力視される。

 安倍晋三首相は「雇用や地域振興に効果が見込める。観光立国の原動力にもなる」などと効果を強調した。

 だが、地域振興の効果は未知数であり、カジノ周辺の治安の悪化が子どもの教育に与える影響も心配だ。

 共同通信の全国電話世論調査では、IR整備法を今国会で成立させる必要はないとの答えが69%を占めた。

 ギャンブル依存症対策も不十分なのに、カジノ解禁を急ぐ安倍政権の姿勢は理解できない。

 1月22日に召集された通常国会は、森友、加計(かけ)学園を巡る疑惑や自衛隊の日報隠蔽(いんぺい)問題などが噴出した。

 与党は会期を32日間延長して、働き方改革関連法や参院定数を6増する改正公選法を矢継ぎ早に成立させた。しかし、今国会でも強引な国会運営ばかりが目立った。

 安倍首相は自民党総裁選をにらんで、看板政策の働き方改革などで実績を挙げようとしたようだ。

 政権の不祥事を巡る一連の疑惑も晴れていない。真摯(しんし)に向き合ったとはいえまい。国会は閉幕しても、安倍首相は国民に対する説明責任を果たさなければならない。