鳴門教育大卒の作家で作詞家の高橋久美子さん(40)=愛媛県出身、東京都在住=が作家活動10周年を迎え、エッセー集「一生のお願い」(筑摩書房、1650円)を刊行した。徳島ゆかりのバンド・チャットモンチーのドラマーを経て2012年に作家となり、これまでに新聞やインターネットメディアなどで書き紡いできたエッセーに書き下ろしも加えた全40編をまとめた。高橋さんに作家活動を振り返るとともに、集大成的な作品となる本著に込めた思いを語ってもらった。

高橋久美子さん

 詩と作詞、東京と愛媛の2拠点生活、農業、好きな本や音楽など、本著には高橋さんの10年間の日々と創作の源が詰まっている。過去に発表したエッセーから今読んでも新鮮に感じ、普遍的に良いと思えるものを選び、今後も読み継がれるように手直しした。

 高橋さんは「10年前の文章は感性が全く違うし、文体も少しずつ変わっていて、今の自分とはもはや別人。昔は荒々しいけど勢いがあって、今では書けない文章でうらやましくも感じました」と説明。自分を振り返る意味でも重要な一冊になったと言う。

 11年9月にチャットモンチーを脱退した後、12年夏ごろに作家として初めて仕事の依頼を受け、13年に初のエッセーを刊行した。ただ、「書こうと思えば誰でも書けますが、文章の世界は奥深く、何十年も残る耐久性を持たせるにはやはり技術がいる」と痛感した。

 作家の山崎ナオコーラさんからの「最初は、依頼が来たものは全て引き受けて書きまくること」という助言が転機となった。「勢いだけでなく何度読んでも面白い文章を書くには、コツコツやっていくしかないと思い、どんどん書いていきました。エッセー集にはさまざまな時代の作品も入っていて、作家としての成長過程が分かると思います」

筑摩書房、1650円税込み

 エッセーでは何気ない日常で見落としやすい大切な感情を描く。21年に出版した初の小説集「ぐるり」も同じテーマだ。「日々のささやかな出来事が積み重なって人生ができていく。それを本を通じて気づけるように書き留めていくのが作家の役目なんだと思う」と高橋さん。続けて「読みながら似たような経験を思い出したり、共感してほっとしたりして、皆さんの人生と照らし合わせてもらえるとうれしい」と話した。

 「私の創作の原点があると言っても過言ではない」と、徳島時代や阿波踊りにまつわるエピソードも収録する。「エッセーのネタの半分は、徳島や地元愛媛など四国での話になっています。徳島の皆さんにも親しみを感じながら読んでもらえると思います」

 徳島のファンに向けては「チャットモンチーの時から親戚の子どものようにかわいがってくれて、ずっと見守ってくれている。これからもいいなと思える文章を書き、徳島が盛り上がるような楽しいこともしていければ」と述べた。(植田充輝)