日本の音楽シーンの最前線を走り続けてきた徳島発のロックバンド・チャットモンチーが、7月21、22日に徳島市のアスティとくしまで開いた「こなそんフェス2018」で〝完結〟を迎えた。グループを愛する多くの音楽仲間やファンが集い、笑顔と感動に包まれて幕を閉じた22日のラストステージ開演直前、メンバーの橋本絵莉子さん(ギター&ボーカル)と福岡晃子さん(ベース)が長年の応援に対する感謝の気持ちや晴れやかな心境を語った。
- こなそんフェスは初日から大いに盛り上がった。
橋本 今日も初日の続きみたいなふわふわした感じで、二日酔いみたいな感じですかね? まだお酒が残ってるみたいな。飲んでるわけじゃなくて、ずっと続いてる感じ! 余韻がずっとある感じ、ずっとつながってる感じです。
福岡 私たちが完結しちゃうというのを前提で来てもらってるのもあって、袖からライブを見ていてみんなのライブにすごい感動しちゃって、自分の本番は正直そんなに覚えてないくらい。
芸人さんも含めて出てくれる皆さん全員にありがたいという気持ちと、お客さんの顔を見て、とにかく楽しそうにしてくれてるからそれがすごくうれしかったので、今日もそんな感じで頑張りたいと思います。
- 初日の阿波踊りの雰囲気や観客の表情はどうだった?
橋本 さっきも話してたんですけど、みんな笑ってたなって思いました。やっぱり、武道館のワンマンライブとはまた違う景色でしたね。よかった、めっちゃ。
福岡 うん、全然違った。やってる私たちもお祭りやなっていう感覚で。最後に徳島でフェスができてよかったなと思いました。改めて。
- セットリストは3ピース時代の懐かしい曲が中心だった。どんな思いで選んだ?
福岡 やっぱり、ずっと応援してくれたお客さんたちが一番喜んでくれることをやりたいなと思って、考えました。
橋本 はい!
- 出演アーティストとはどんな話をした?
橋本 何の話したっけ?
福岡 「完結なんやなー」みたいな話をしてくれる人もいれば、「今日の最後の阿波踊り楽しみやな」みたいな人もいるし、いろいろですね。あとは今までの思い出とかをしゃべったりもしますし。終わってゆっくりお酒飲みたいなあ? 出てくれたみんなとね。
橋本 そうね。
福岡 それくらい、最後の最後までやりたいことばっかりやらせてもらってるから、けっこうドタバタしてます。気持ち的にも。
- しんみりではなく、思いきり楽しんでお祭り騒ぎという感じ?
福岡 そう。超ハイパー文化祭みたいな感じです。
橋本 しんみりしたの、小籔(千豊)さんだけ(笑)。こやびんだけ「残念です」ってずっと言ってた。
福岡 そう。「私は一番悲しいです。皆さんは盛り上がってください」って。
- 初日は元メンバー高橋久美子さんが「シャングリラ」を一緒に演奏した。
橋本 楽しかった。懐かしかった。こんな感じだっけと思って。
福岡 ほかにもシュノーケルとBase Ball Bear(のバンド2組)と一緒にやったけど、みんなが曲の中で3人だけになる瞬間を作ってくれて。そこでめっちゃ思い出しました! 一緒にやった日々のこととか。でも久美子も泣いてたから…。
橋本 そう、登場からね。目が真っ赤になって。
福岡 まともにしゃべれる状態じゃなかったよな。でもそれも含めていろいろ一緒に越えてきたなって感じがありました。
橋本 安心感があったのは、ベボベ(Base Ball Bear)とシュノーケルのおかげも大きかったし、それで久美子も安心して(ドラムを)たたけてたかなって。
福岡 久美子自身が超久しぶりにドラムをたたいたから、すごく緊張してたのが、シュノーケルとベボベのおかげで安心してできたって言ってました。
- これからラストライブと「かもし連」の踊りだが、どんな時間にしたい?
橋本 100%でやるしかないですよね、最後やし。常にですけど。変に最後とか思いすぎずにできたらいいなと思いますけど。
福岡 できるかな~?
橋本 できないかな~?(笑) できないよね。
福岡 昨日だいぶきてたよ(笑)。
橋本 全然歌えんかった瞬間があった!
福岡 そういえば!
橋本 そういえば! 私昨日バンド名言うの忘れた。「こんばんは、チャットモンチーです」って言ってないよな?
福岡 言ってないか…。
橋本 言ってないんだよね。スッて入っていった(笑)。忘れちゃった。
福岡 じゃあ、今日これでリベンジしよ。名前だけでも覚えて帰ってくださいって(笑)。
- “完結”の場に徳島を選んだ際は、どういう風に話し合った?
橋本 2年前にこなそんフェスの1回目をやったときに「もう1回やりたいけど、すぐではないかな」みたいな。それぐらいみんな大変だったので。
4年に1回くらいかなって話をしてたんですけど、“完結”が決まったときに「やっぱりこなそんフェスはやって終わりたいね」っていうことになって、それがラストの方がチャットモンチーらしく終われるんじゃないかってみんなで話し合いをして決めました。
- バンド活動を振り返って率直な感想を。
橋本 よかったよね?
福岡 めっちゃ楽しかったです、ほんまに。もちろんいろいろ大変なこともあったし、つらいこともあったけど、バンドしたいって人がおったら「やった方がいいよ!」って勧めたくなりますね。
橋本 やらないと分からなかったこととか、やって出会えた人とか、いろんな物事や人たちに会えたから。全然違う人生だったと思いますね、やってなかったら。
- ラストアルバム「誕生」で高橋さんが「砂鉄」の歌詞を提供した。お願いするときにリクエストしたことは?
福岡 リクエストはなくて…。でも、久美子がすごく悩んでたというのをディレクターから聞いて、ディレクターさんが久美子に「今のチャットモンチーに歌ってほしいと思う、歌ってたらいいなと思う歌詞を書いたらいいんじゃない?」ってアドバイスしてくれて、それで久美子が書いてくれました。
-高橋さんの著書「いっぴき」に橋本さんが解説文、福岡さんが帯推薦文を書いた。依頼を受けたときの思い出や感想は?
橋本 完結するよって先に久美子に教えて、その後で歌詞をお願いした後での(解説文の)依頼だったので。うれしかったです、すごく。完結するのに歌詞をお願いして、ちょっと大丈夫かなって心配していた部分があって。ちょっと悪いなとか思ってた部分もあったけど、お願いされたから。頑張ろう!と思いました。うれしくて。
福岡 久美子は作家になりたくて脱退して作家になっているから、そういう久美子とこうやって一緒に共演というか、お仕事できたことはすごくつながったなというか、全部意味があることだったんだなっていうことで、すごくうれしかったです。
- 音楽を続けてきて一番変わったこと、これからやりたい音楽は?
福岡 変わったことは、物理的にとかいろんな環境の変化とかで、皆さんもたぶん同じようなこともあると思うんですけど、変えざるを得ない状況はたくさんあったけど、むしろその中で変えられなかったことの方が私たちは大きくて。
やりたいことを常にやりたい、ってことをずっと変えなかったので、それがたぶん今回の完結につながったと思っていて、もうやりたいことがなくなっちゃったというか。
だからチャットモンチーで散々やりたいことを全部やらせてもらって、今回のフェスもそうなんですけど、ずっとそれに付き合ってくれたファンの皆さんにすごい感謝してます。変わってないところの方が目立ってるなって気がしてて。
これからの音楽は全然分かんないですね。決まってないな?
橋本 はい、申し訳ないくらい(笑)。
福岡 今日が終わるまでは何とも言えないです。
- これからも手掛けた楽曲は多くの人に聴き継がれていく。今後の思いは?
福岡 えっちゃん(橋本さん)もよく言ってるんですけど、今のチャットモンチーの状態で真空パックしてもらって、皆さんがいつ開けてもそのときの風景や思い出がよみがえるような、皆さんと時代をともにしたときのことをいつでも思い出してもらえる存在だったらいいなと思います。
- ファンへメッセージを。
橋本 今回のライブもやったことないことをけっこうやっていて、初めてドラムをたたいてもらって一緒にライブをしたりとか、今までやったことなかったけど、そういうのでも喜んでくれるお客さんで、本当に応援してくれてついてきてくれてありがとうございましたっていう思いがすごいです。
これからもずっと聴いてほしいし、チャットモンチーをコピーしてほしいし、またいろんな人に広めてほしいなって思います。よろしくお願いします。
福岡 ここ数年、徳島でいろいろやった日々が濃厚やなと思っていて、いろんな人にお手伝いしてもらって、こうやってこなそんフェスも成功させることができて、チャットモンチーは無事に笑顔で完結できたと思います。デビューして13年、結成して18年なんですけど、続けてきたからこのフェスができたなと思ってて。
出てくれてるアーティストの皆さんもバンドを続けてなかったら出会うことがなかったし、こうやって徳島に呼ぶこともできなかったので、本当にバンドをやってきてよかったなと思うことがたくさんあって、今2人になってますけど、お客さんたちがいるからここに立ててるんだなとすごく思います。本当にありがとうございました。