亡くなった文良さんへの思いを胸に、初の個展を開く惠子さん=阿波市

亡くなった文良さんへの思いを胸に、初の個展を開く惠子さん=阿波市

 阿波市の岩脇惠子さん(75)が10月1日から、画歴20年を記念した初の個展を吉野川市鴨島町の市文化研修センターで開く。農業の傍ら、日常の暮らしをテーマに日本画を描き続け、県美術展(県展)で特別賞を受けるなど入賞を重ねている。長年、創作を支えたのが夫の文良さん。今月5日に病気のため75歳で他界した。開催するかどうか悩んだが、楽しみにしていた文良さんの思いに応える。個展のタイトルは「父ちゃん(夫・文良)と歩む画業20年」。呼び慣れた愛称を盛り込んだ。

 惠子さんが日本画を始めたのは55歳の頃。「楽しんでくれるのではないか」と、文良さんが勝手に日本画教室へ申し込んだのがきっかけだ。最初はあっけにとられた。それでも毎日与えられる写生の課題をこなすうちに、自然と画作にのめり込んでいった。

 本業の果樹栽培は1年を通して作業があり、休みは少ない。制作を続けられたのは、文良さんが「仕事はいいから絵を描いて」と積極的に後押ししてくれたから。惠子さんは「作品の全部に思い出が詰まっている」と涙ぐむ。

 汗の染みた農具を題材にして2012年の第67回県展で特別賞を受賞した「農具たち」、木の籠の中で干した唐辛子を描いた「とうがらし」など、何げない日々の風景を切り取るのが作風だ。県展以外の公募展でも入賞し、画歴20年を迎えた今年4月に教室の先生から個展開催を勧められた。

 文良さんは2年前から闘病していた。個展を開くとなると準備に手間がかかるため惠子さんは当初は乗り気でなかったが、文良さんの強い希望に動かされた。開催まで残り1カ月を切って病状が悪化。惠子さんの晴れ舞台を目にすることなく、この世を去った。

 惠子さんは「『四十九日』を迎える前に開くべきかどうか思い悩んだけど、個展を開くことと日本画の制作を続けることが夫の遺言だった」。文良さんに愛された、県展特別賞の受賞作など13点を並べる。

 10月5日まで開催。無料。