欧州連合(EU)向けの柑橘(かんきつ)類の検疫条件が今年から緩和されたことを受け、徳島県は特産スダチの輸出を本格化させる。3年前から取り組んでいる露地物の輸出増に加え、ハウススダチを初めてフランスに輸出する。23日、県内有数の産地である阿南市で、県や農協職員らが輸出に向けた収穫作業を行い、生産者からは歓迎の声が上がった。
今回輸出されるのは、農業北條春樹さん(57)=同市山口町南谷=が栽培した約40キロ。石井町の県立農林水産総合技術支援センターで塩素消毒や検査を行い、27日に関西空港から空輸する。現地の卸売業者を通して、高級レストランなどで使ってもらう。
県によると、EUへのスダチの輸出量は2015年度が5キロ、16年度が12キロ、17年度は80キロだった。独特の香りを持つ皮や酸味のある果汁が料理人らに好評を得ているという。
1月にEU向けの輸出条件が緩和され、スダチに発生しやすい「カンキツかいよう病」に関する栽培地検査がなくなった。これに伴い、18年度の輸出量は前年度を大幅に上回る見込み。今秋にはフランスで、一流シェフやバイヤーを対象にしたPRイベントも計画している。
阿南市では山口、新野、桑野、加茂谷地区の計47戸が約7・8ヘクタールでハウススダチを栽培。JAアグリあなんすだち部会長の北條さんは「EU輸出が増えれば、生産者の所得安定につながる。生産意欲が高まり、後継者も育つ」と喜ぶ。
県もうかるブランド推進課の濱本京平主任主事は「EU圏内で影響力のあるフランスのシェフらにスダチを使ってもらい、一層の認知度向上とブランド化を進めたい」と話している。