吉野川市は、2004年の合併前の「麻植郡」の名称の由来になった麻の生産復活に取り組む。大麻の原料となることから、市内でも長らく栽培されていない麻の種子を確保し、一定量の麻を生産。将来的には、麻繊維を使ったオリジナル製品の製造・販売などを手掛ける方針だ。第一歩として、県が自治体の地域活性化を支援する「徳島版地方創生特区」の選定を目指す。

 24日の市地方創生推進協議会で示した市版総合戦略(2015~19年度)の素案に盛り込んだ。具体的な事業として▽特区申請▽官民による推進協議会設立▽産官学の連携推進▽市民の理解を得るための周知活動-を挙げた。

 市によると、特区申請作業と合わせ、県立農林水産総合技術支援センター(石井町)と連携。麻の種子の保存や培養ができる体制をつくり、栽培に適した場所を選定する。ただ、麻の栽培には法律上の制限があり、取り扱いには知事の免許が必要。このため、栽培に従事する農業者らの免許取得もサポートする。

 種子は、麻の産地・栃木県が開発した品種「トチギシロ」を譲渡してもらう方針。トチギシロは麻薬成分が低く、葉を燃やした煙を吸引しても人体への影響はないという。

 市は16年度に県が募集する特区事業に向け、事業計画を練る。選ばれると、年間最大500万円の交付金が受けられる。

 麻植郡の名称は、古代に勢力を誇った阿波忌部氏が麻を植えて布を織り、天皇の即位儀礼・大嘗祭(だいじょうさい)に「麁服(あらたえ)」を献上したことに由来するとされる。04年10月の4町村合併で吉野川市が誕生し、麻植郡は消滅した。

 こうした吉野川市独自の歴史の再評価を求める声が、市地方創生推進協議会の委員から出ていたため、市は麻農業の振興を素案に加えた。

 市企画財政課は「市内の若い世代が地域の歴史や文化を見つめ直す機会になるのでは。地域色あるまちづくりの一環としたい」としている。