活動のモチベーションを尋ねると「これはもう、日々の生活の一部なんよ」と山下さん。

活動のモチベーションを尋ねると「これはもう、日々の生活の一部なんよ」と山下さん。

毎年春恒例の加茂谷鯉まつり。那賀川の上を約300匹の鯉のぼりが泳ぐ。

毎年春恒例の加茂谷鯉まつり。那賀川の上を約300匹の鯉のぼりが泳ぐ。

 地元住民や移住者が一緒になって地域の賑わいを生み出している阿南市加茂谷地区。那賀川の中流域に位置する10町からなるエリアだ。たくさんの史跡が残る遍路道「かも道」や落差30メートルの「午尾の滝」、お松大権現など歴史的な魅力や自然あふれる地域に、今新しい風が吹いている。話題のお店や町づくりに情熱を注ぐ人たちを訪ねた。

NPO法人 加茂谷元気なまちづくり会

 近年の加茂谷の“おもっしょさ”を支える、有志住民団体「NPO法人 加茂谷元気なまちづくり会」。加茂谷のさらなる活性化を目指し、日々活動に励んでいる。もうすぐ結成10周年、理事長の山下和久さん(67・阿南市出身)に、その道のりを改めて振り返ってもらった。

 発足のきっかけとなったのは、2012年に開かれたまちづくりワークショップ。加茂谷にある10町の代表者が集まり、地域の課題や将来像を話し合った。同年12月、20名ほどのメンバーで「加茂谷元気なまちづくり会」を結成。ワークショップで挙がったアイデアの実現に向けて活動を始めた。

 2014年8月、東京の武蔵野大学から「大学生100人の農業体験インターンシップを受け入れてもらえないか」と相談が舞い込む。地域として前例のない取り組み。一度は断ったが『もう一回考えてみよう』という事務局メンバーの提案で再検討するうちに気運が盛り上がり、受け入れを決めた。30軒ほどの農家に滞在の協力を得て、あとはお盆明けに来る学生たちを待つのみだった8月10日。台風11号により河川が氾濫し、加茂谷は未曾有の浸水被害に襲われた。「もう断るつもりだったんやけど、大学側から『学生にできることがあれば何でも手伝います』って言うてくれて。急遽、災害復旧ボランティアとして来てもらうことになったんです。都会の子たちが一生懸命、泥まみれになってやってくれて。感動したしありがたかったね」。この年のできごとが引き金となり、会の活動はさらに活発化。キョーエイ店舗内の産直「すきとく市」の集荷場を加茂谷内2カ所に設置して独自の出荷システムを構築したり、遍路道の保全やPRを行ったり。新たな取り組みを次々と仕掛けてきた。

 現在、大きな柱となっているのは移住就農誘致。東京や大阪などで開かれる移住マッチングイベント「新・農業人フェア」に出展したり、そこで出会った加茂谷に関心がある人を招いて移住体験ツアーを実施したり。「心掛けているのは、いいことだけじゃなくて、不安に思われるようなことも正直に説明すること。たとえば、洪水があったら浸かる可能性がありますよとか、居住地区によっては消防団活動や祭りといった地域行事に参加してもらいますよとか。やっぱりそれをちゃんと伝えた方が、後々お互い気持ちよく過ごせるしね」。地道で実直な活動が実を結び、これまでにのべ21組77人が移住。そのうち34人は子どもで、一度は途絶えていた地区の祭りが復活するなど、過疎化が進む地域に光が差している。「移住が決まったら、空き家や農地を格安で貸し出すのもうちの売り。大変なハウスの整備や空き家の片付けも、慣れとる人たちがようけ集まって手伝うんよ」。

 「我々の強みはチームワーク。それぞれが得意分野を持ち寄って、加茂谷のために一生懸命頑張るところ」と山下さん。その根源は、平成元年から30年以上続く「加茂谷鯉まつり」にあるという。「何度も何度もみんなで一緒に汗を流してきた。その経験があるけん、団結力ができとると思うわ」。現在の会員は120名以上。加えて、プロジェクトごとにさまざまな住民や団体と関わっているが「その関係をもっと、水の波紋のように広げたい」という。「たとえば、昨年始めた『ご近所ドライブパートナー事業』。路線バスが廃止になった地域などで、高齢者の買い物や通院をサポートするサービスで、新たに数人が送迎車の運転手になってくれ13名になった。そうやって新しい活動を始めるときに声をかけて、少しずつ仲間を増やしていきたい。人数が多いほど、もっといろんなことができるけんな」。