起業を目指す若者や社会人を対象にした「創業人材育成セミナー」(徳島県、徳島新聞社主催)が2日、徳島市の徳島大常三島キャンパスであり、IT大手サイバーエージェントを経てベンチャー企業「WiL(ウィル)」(東京)を創業した西條晋一氏(42)=阿波市出身=が講演した。西條氏は約70人を前に、起業の心構えや具体的な手法について経験を交えながら解説した。

 西條氏はサイバーエージェントの役員時代から次々と新事業を起こし、起業家育成や大企業のイノベーションを支援するWiLを設立した経緯を紹介。「もうかる分野というより、自分が好きなことや不便を感じて解決したいと思う課題をテーマに選んできた。その方がアイデアも出やすい」と述べた。

 起業を成功させるためには▽初期投資の小さい事業の選択▽適度な距離感を保ちつつ信頼できる仲間▽夢のある事業計画-などが必要との持論を展開。「専門家に聞きながら綿密な事業計画を練り、(出資する)ベンチャーキャピタルに魅力をしっかりPRする能力も必要」と強調した。

 社内で新規事業を活発に起こしていくことも重要と指摘し「社員には若いうちから、事業に対する決断経験を重ねさせること。役員もどんどん事業を提案し、自らやってみせることが大切」とアドバイスした。

【写真説明】 さいじょう・しんいち 脇町高、早稲田大卒。伊藤忠商事を経て2000年にサイバーエージェントに入り、専務取締役や米国法人CEOなどを歴任。13年、WiLを設立。14年、Qrio代表取締役に就任した。

 ◎西條氏インタビュー

 西條晋一氏が講演前、徳島新聞のインタビューに応じた。西條氏は、あらゆる機器を通信でつなぐ「IoT(インターネット・オブ・シングス)」事業を手掛けるQrio(キュリオ)の代表取締役も務めており、「さまざまな分野で技術を活用し、生活の利便性を向上させたい」と力を込めた。

 -Qrio立ち上げの経緯は。

 海外に通用するようなネットベンチャーを日本から起こしたいと思い、WiLを創業した。大企業に眠ったままの技術やサービスをベンチャーの視点で掘り起こそうと、ソニーに話を持ち掛け、ソニー40%、WiL60%の出資で設立した。

 -スマートフォンを使って鍵を開閉する「スマートロック」開発の経緯や特長は。

 自分が所有する不動産をスマホで管理できれば便利だな、と思ったのがきっかけ。電子基盤が内蔵された器具を、ドア内側の鍵部分に粘着テープを使って手軽に装着できる。スマホの専用アプリを利用するため、事前に設定しておけば鍵を持たない友人や家族も自分のスマホで解錠することができる。

 -今後の展開は。

 発売後5千個ほどが出たが、個人の購入がほとんど。「BtoB」(企業間取引)を拡大していきたい。

 -徳島で起業を活発化させるにはどうしたらいいか。

 優秀な人材を集積させることが重要だ。例えば、徳島大の周辺で起業家が魅力的な事業を展開するとか。身近に事例があれば続く人が出てくると思う。