【上】土が掘り返され、木の根があらわになり、石が崩れた斜面=美波町日和佐浦の城山【下】ちょうちんの明かりで浮かび上がった「賀正」の文字=2013年1月1日、美波町日和佐浦の城山

【上】土が掘り返され、木の根があらわになり、石が崩れた斜面=美波町日和佐浦の城山【下】ちょうちんの明かりで浮かび上がった「賀正」の文字=2013年1月1日、美波町日和佐浦の城山

 美波町日和佐浦の城山の斜面に、「賀正」の文字の形にちょうちんを並べて点灯する正月の恒例行事が2016年は中止される。斜面の土がイノシシに掘り返されたとみられ、足場が柔らかくなってちょうちんを取り付けるためのくいが打てず、作業を行うのも危険なため。中止は1997年の開始以来初めてで、正月の風物詩として親しんできた住民らは残念がっている。

 点灯は町観光協会が行っている。文字はそれぞれ縦9メートル、横7メートル。「賀正」の形になるように、長さ約1・2メートルのくいを打って電線をつなぎ、約180個のちょうちんをつるす。元日の午前0~7時と午後5~10時、2~15日の午後5~10時に点灯している。

 町観光協会の江本友昭会長(61)=同町奥河内、自営業=が11月下旬に下見したところ、斜面全体の土が掘り返され、木の根が露出したり、石が崩れたりしていた。イノシシがミミズや木の根を食べるために掘った可能性が高い。

 例年は12月20日前後に町観光協会の職員ら10人ほどがちょうちんを取り付けていたが、3日の理事会で中止を決めた。

 賀正の文字の点灯は、旧日和佐町商工会青年部長の福島俊也さん(55)=同町日和佐浦、自営業=が京都市の「五山の送り火」に着想を得て同商工会が実施。2008年に美波町観光協会が引き継いだ。同町奥河内の四国霊場23番札所・薬王寺を訪れる多くの初詣客にも喜ばれてきた。

 城山の近くでガソリンスタンドを経営する水口裕將さん(65)=同町奥河内=は「賀正の点灯がないと、年始ムードが盛り上がらない」と嘆く。

 観光協会では17年以降の実施について、設置場所の変更も含めて対応を協議するとしている。江本会長は「楽しみにしている初詣客や住民が多いので、中止は苦渋の決断。17年に復活できるようにしたい」と話している。