2018年のベートーベン「第九交響曲」アジア初演100周年に向け、鳴門市などは記念事業の実施計画をまとめた。メーンとなる記念演奏会は18年6月3日に鳴門市文化会館で行う。第1次世界大戦中、「第九」が初演された板東俘虜(ふりょ)収容所(同市大麻町)のドイツ兵捕虜の子孫らを招き、100年の節目を祝う。同市の姉妹都市ドイツ・リューネブルク市でのプレイベント、子どもを対象にした「第九学習」など46事業を展開する。
記念演奏会は「100年の集大成」がテーマ。収容所の松江豊寿(とよひさ)所長が捕虜を人道的に扱ったことが第九初演に結び付き、今や全国各地で演奏されるまでになった100年の歴史を振り返る機会にする。
鳴門で1982年から行われてきた第九定期演奏会と縁の深い指揮者にタクトを振ってもらう方針で、人選を進めている。また、捕虜の子孫を演奏会に招待するとともに、収容所跡に案内し先祖に思いをはせてもらう。
アジア初演からちょうど100年に当たる6月1日には「原点回帰」をテーマにした特別演奏会を開く。当時の収容所の雰囲気を伝える舞台演出をする。
17年3月にはリューネブルク市で「里帰り公演」を行い、鳴門市など全国の合唱団が、リュ市の合唱団と共に「歓喜の歌」を高らかに歌う。捕虜の多くが中国・青島で捕らえられた縁で鳴門市と友好都市となった青島市の合唱団も参加する。
鳴門の第九定期演奏会では、参加者の高齢化が課題になっている。第九を若者に引き継いでいくため、市内の幼稚園と小中学校で「第九学習会」を開き、子どもたちが「歓喜の歌」の歌詞の意味を理解し、ドイツ語で歌えるように指導する。
このほか▽板東俘虜収容所跡の国史跡への指定▽松江豊寿収容所長の銅像建設▽第九ゆかりの地を巡る観光ルートの設定-などに取り組む。
実施計画は、鳴門市の産学官でつくる「アジア初演『なると第九』ブランド化プロジェクト推進協議会」(会長・泉理彦市長)が策定した。21日に協議会を開き、正式決定する。