拍子木を鳴らし、「火の用心」と呼び掛けながら師走の住宅街を巡回する龍昇経理情報専門学校(徳島市蔵本町2)の防犯パトロールが11日、始まった。終戦翌年の1946年から毎年続け、今年で70回目。火災や犯罪を防いだこともあり、生徒らはこれからも街の安全を守ろうと決意を新たにしている。
11日夜に同校であった今年の結団式には、生徒や職員、卒業生21人が参加。前野敦史さん(19)=専門課程経理情報科1年=が「70年の伝統を受け継ぎ、ボランティア精神と地域への感謝の気持ちを込めてパトロールします」と宣誓した。
生徒らは約1時間にわたり、同校周辺の佐古、加茂名地区を巡回。ちょうちんを持ち、拍子木を鳴らしながら「火の用心」「夜道は車に気を付けて」と声を張り上げた。土、日曜を除き16日まで行い、延べ約80人が巡回する。
まだ空襲の焼け跡が目立っていた46年、同校の前身・龍昇珠算塾の生徒が地域の青年団と夜回り隊を結成したのが始まり。次第に生徒が中心となって行うようになり、同校の名物行事となった。
久次米健一校長(60)によると、パトロール中の生徒が窃盗犯を発見して通報したり、男に襲われそうになっていた女性を助けたりしたことがあった。生徒の声を聞いた住民がガスこんろの火を付けっぱなしにしていたことを思い出し、「火事にならずに済んだ」と感謝されたこともあったという。
拍子木の音で年の瀬を実感するという住民は多く、生徒に「ありがとう」と声が掛かることもある。戦後70年で街の様子はすっかり変わったが、久次米校長は「生徒は人の役に立つ喜びを知ることができる。それは昔も今も変わらないでしょう」と目を細める。
初めて参加した吉岡幸人君(15)=高等課程経理情報科1年=は「歴史ある行事に参加できてうれしい。先輩たちの跡を継いで頑張りたい」と話していた。