「自分たちは間違っていない、はずだ」。自らのミスをミスと認めたくないために、人はさらに過ちを犯す。オウム事件での神奈川県警の失態は、取り返しのつかない事態を次々と生んだ

 死刑が執行された岡崎一明死刑囚は、地下鉄サリン事件の5年前、教団の資金を持ち逃げして脱会した。同時に、坂本堤弁護士一家失跡事件を捜査していた県警に、匿名の封書を送った

 「龍彦ちゃんが眠っている」。便せん4枚に、1歳の幼子を無残に捨てた状況を記していた。県警は地図を頼りに長野県の山中を掘り返したが、見つけられない。「いたずらでは」との疑念から、わずか1日で捜索を打ち切った

 半年後、岡崎死刑囚の事情聴取に踏み切る。既に、教祖から口止めされ、事件への関与を否定した。「岡崎は無関係」が県警の大勢となった。犯人と向き合いながら、事件解決の絶好機を逸した

 地下鉄サリン事件の後、岡崎死刑囚は、再び神奈川県警の前に姿を現す。一家殺害の犯人として自首したのだ。しかし、県警は自白を調書に取りながら、身柄を放してしまう。自由を得た岡崎死刑囚は、尾行もつかず、悠々と中国旅行を楽しんだ

 「不都合な真実」を前にすると、組織は思考停止に陥る。警察には、もっと早く教団を解体に追い込むチャンスがあった。サリンの悲劇は防げたのだ。