省庁・関係団体 「移転で機能低下」
徳島県が最重視する消費者庁の誘致について、14日に県庁などを視察した河野太郎消費者担当相が前向きな考えを見せたことに、県庁内では「移転を前提とした大臣の強い意気込み」と期待が高まっている。しかし省庁や関係団体からは「地方移転すれば行政機能が低下する」と抵抗が激しい。河野氏の前向き発言で反対論がさらに強まることも予想され、前途は依然として多難だ。(1面参照)
河野氏は視察後、2015年度中に消費者庁長官らを神山町に派遣し、移転に向けた課題を洗い出す考えを示した。朝日隆之県地方創生局長は「大変ありがたく、今後に向け手応えを感じている。ぜひ徳島への移転を実現してほしい」と話した。
一方、国の事務方の基本姿勢は移転反対だ。
「なぜ徳島に移転する必要があるのか」。10~12月に3回行われた内閣官房や消費者庁による県のヒアリングは、予想通りの質問にさらされた。
県は「政策面で一定の理解を示してもらっている」とするが、国側の「国会や他省庁、関係団体との調整機能が低下しデメリットが生じる」との固定概念を切り崩すには至っていない。
テレビ会議システムなどICT(情報通信技術)を駆使して距離的障壁を解消できると主張する県。河野氏は同調するが、国側は「大きなコスト増になる」とにべもない。
消費者庁の関係団体でも反対の声が勢いを増している。日弁連のほか全国消費者団体連絡会や全国消費生活相談員協会が11月、安倍晋三首相や石破茂地方創生担当相らに徳島移転に反対する意見書や要望書を相次いで提出した。「徳島に移転すれば庁の機能が後退する」「徳島の利益を超える不利益が消費者全体に及ぶ」との内容だ。
国の関係者からは「数百人の職員がいる庁の移転は難しい。実際に移転するのは小規模機関にとどまる」との見方が広がる。最終的な判断を示す首相や石破氏が担当相の意向をくみ取って政治決断できるか。東京一極集中の是正を掲げる政権の本気度が試される。