神山町に滞在しているオランダ人女性アーティスト、キム・ボスケさん(40)が、阿波和紙と藍染を用いた作品を仕上げた。吉野川市山川町の阿波和紙伝統産業会館が協力し、徳島が誇る二つの伝統産業を生かした芸術作品となっている。
神山町内で撮影した滝やその周辺の写真を25~30枚重ねて、1枚の抽象的な作品を制作。それをインクジェットプリンター対応の大型和紙(縦1・7メートル、横1・1メートル)に印刷し、藍染した。和紙が生む柔らかな質感に加え、美しい藍色の濃淡が、ボスケさんの写真に独特の味わいを与えている。
ボスケさんは6月、神山アーティスト・イン・レジデンス(KAIR)実行委の「ベッド&スタジオプログラム」を活用して来町した。和紙作りの工程で漉(す)く作業を繰り返したり、何度も藍染をする作業が、写真を重ねて作品づくりをする自身の制作手法と似ていると発見。写真と和紙、藍染の組み合わせに挑戦した。
作品6点を仕上げたボスケさんは「二つの伝統産業とコラボレーションできた。素晴らしい経験になった」と話した。8月上旬に帰国する予定。
和紙会館によると、近年、海外アーティストの間で和紙の需要が高まっている。ただ写真を印刷した大型和紙の藍染作品は初めてという。同館スタッフで藍染師の藤森美恵子さん(67)は「面白い試み。アーティストにとって、表現方法の幅が広がる」と話し、伝統産業の新たな魅力発信に期待を寄せている。
◇
27日午後6時から、神山町下分の「下分アトリエ」でボスケさんが作品解説を行う。入場無料。問い合わせはKAIR実行委事務局<電088(676)1178>。