越冬のため飛来したナベヅル=16日、阿南市那賀川町

 環境省のレッドリストで絶滅危惧Ⅱ類に指定されているナベヅルが、徳島県内に相次ぎ飛来している。日本野鳥の会県支部は今季、100羽以上を確認した。越冬地で有名な鹿児島・出水(いずみ)平野以外にこれほど多く飛来するのは珍しい。県支部は背景に出水平野の過密化があると推測。徳島が国内第2の越冬地として定着するよう期待を寄せる。一方、出水平野のナベヅルから鳥インフルエンザウイルスの陽性反応が出たことで、県内の養鶏業者からは不安の声も上がっている。

 県支部によると、県内で今季初めて確認されたのは10月29日で、海陽町に2羽が飛来。31日には阿南市に13羽が姿を見せた。11月24日には海陽町の2カ所で70羽、阿波市で7羽が観察され、過去最多の確認数となった。

 多くが越冬地に向かう途中で立ち寄ったとみられ、3分の2ほどは飛び去ったが、約30羽は阿南市那賀川町にとどまり、羽を休めている。

 ナベヅルの県内飛来が初めて確認されたのは1980年。2003年から増え始め、08年には63羽が飛来、うち13羽が越冬した。しかし河川工事の影響からか、12~14年は、越冬地から繁殖地に戻る途中で立ち寄ったとみられる1羽しか確認されていなかった。

 飛来が増えた理由について県支部は「出水平野が飽和状態にあることに加え、中国の環境汚染で南下ルートを変更した可能性があるのでは」と分析する。

 ナベヅルの寿命は約20年。記憶力がよく、過去に来た場所を覚えているという。いい場所だと認識すれば翌年も来る半面、嫌な思いをすると帰ってこない可能性が高い。県支部は「越冬地として定着するには、ねぐらとなる河川の中州や餌場の田んぼで安心して過ごせることが重要。むやみに近づいたり刺激を与えたりしないで」と呼び掛けている。

 一方、県は22日、出水平野のナベヅル1羽の死骸から鳥インフルの陽性反応が出たことを受けて県庁で危機管理連絡会議を開き、関係部署の職員に対して県内養鶏農家の消毒や野生動物の侵入防止対策などを徹底するよう呼び掛けた。

 県内61の業者・農家でつくる県養鶏協会の杉原勲会長は「鶏舎の周りに石灰をまくぐらいしか方法がないので、それを続けるしかない」と不安そうに話した。