大会期間中は夜中に目が覚める日が続いた。地区大会で数々の優勝旗を手にしながら、今春の県学童選手権は初戦、高円宮杯県大会では3回戦で敗退。「強いチームなのに」と言われる重圧を感じ「今度こそ勝たせてやりたい」と思っていた。
そんな重圧を選手のバットが吹き飛ばした。決勝では11安打12得点。三回コールドの大勝で初優勝を決め、意気揚々と引き揚げてくるナインをまぶしそうに見詰めた。「子どもたちが本当にようやってくれた」と目頭を押さえた。
指導で重視するのは理論より感覚。「こども野球は、ただただ根気。真面目にやっていたら急にできる時が来る」。選手が感覚をつかむまで、ひたすら練習に付き合う。「粘り強く教えたら、どんどんうまくなっていく。その姿を見るのが面白い」
中野島小高学年時は友達と野球チームをつくって練習や試合を楽しんだが、富岡西高では陸上部に入部。やり投げ選手として活躍し、3年時には国体で5位に入賞した。34年にわたりチームを率いた上田彰三前監督に誘われてコーチとなって15年。昨年9月、後を託され、打撃重視の伝統を受け継いだ。
県大会三度目の正直で成し遂げた優勝。「ほっとした。今日はよく眠れそうだ」と破顔した。建設会社に勤める会社員。阿南市柳島町の自宅で16歳と14歳の愛犬と暮らす。2匹と庭でボール遊びをするのが至福の時という。58歳。