10年間のフランス留学でギターの奏法を磨き、昨年11月に帰国した徳島市出身のギタリスト徳永真一郎さん(30)=東京都=が、初のCDアルバム「テリュール」(マイスター・ミュージック)を発売した。最先端の演奏技術を駆使し、スペインとフランスの名曲9曲を叙情に満ちた繊細な音色で奏でている。
アルバムは、日本を代表するギタリスト福田進一さんとマイスター・ミュージックが、若手の実力派ギタリストの発掘を目的に2013年にスタートさせた「ディスカバリー・シリーズ」の第3弾。
徳永さんと福田さんが、スペインの伝統的なギター音楽と、フランスの印象派音楽が互いに影響し合っていることがうかがえる曲を選んだ。
冒頭は、フラメンコの影響を受け、3拍子と2拍子の軽快なリズムが交錯する3曲。生き生きとしてインパクトがある「サパテアード」、情熱を感じさせる「ペテネーラ」、民俗的かつ技巧的な印象を受ける「ロンデーニャ」(いずれもR・S・デ・ラ・マーサ作曲)と続く。
「暁の鐘」(E・S・デ・ラ・マーサ)は、一つの音を小刻みに連続して出すトレモロ奏法と、教会の鐘のような音を出すカンパネラ奏法を融合させた響きが美しい。「ソナタ」は33歳の若さで亡くなった悲劇の作曲家ホセが残したギター曲2曲の一つで、豊かな詩情を表現している。
徳永さんが留学中、師事した作曲家ディアンスの「サウダージ第2番」や、パリ国立高等音楽院の卒論テーマだった現代作曲家ミュライユの「テリュール」が終盤を飾る。
「テリュール」はアルバム唯一の現代曲。フラメンコ的にかき鳴らすラスゲアード奏法が約10分間続き、聞き応えがある。独特の響きを忠実に録音するため、音楽ホールを貸し切り、200キロヘルツの帯域まで録音できるマイクロホンを使用したという。
徳永さんは「30歳の節目に、素晴らしい環境で録音できてうれしい。今後も演奏活動に励みたい」と喜ぶ。
福田さんは「徳永さんは技巧のさえと、繊細な叙情に満ちた歌のセンスを併せ持つギタリスト。レパートリーもルネサンス、バロックからポピュラー、現代音楽まで幅広い」と高く評価している。
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「テリュール」は3240円。アルバム収録曲を含むリサイタルが8月19日、北島町立図書館創世ホールで開かれる。問い合わせは川竹道夫さん<電088(631)7893>。
とくなが・しんいちろう 徳島市出身。9歳で川竹道夫さんに師事し、城東高校卒業後の2007年渡仏。ストラスブール地方音楽院を経て、11年からパリ国立高等音楽院で学ぶ。10年、オルシュティン国際ギターコンクール1位およびグランプリ。16年、同音楽院修士課程を首席で卒業し、17年、帰国。18年、ヴェリア国際ギターコンクールのコンチェルト部門第2位。