俘虜演芸会で写真に納まるエンゲル・オーケストラの楽団員ら。2列目の左から3人目が松江所長=1919年10月12日、徳島市の新富座(鳴門市ドイツ館提供)

 鳴門市ドイツ館は、第1次世界大戦中に板東俘虜(ふりょ)収容所などで撮影された150枚以上の写真画像を、新たに入手した。和服姿でくつろいだ松江豊寿(とよひさ)所長が、捕虜楽団「エンゲル・オーケストラ」の団員と一緒に記念撮影した珍しいショットもある。開放的な収容所運営を行った松江所長が、捕虜たちに慕われていたことを伝えている。

 写真は、元捕虜デルト・エーリヒの孫娘クリステル・コアールトさん(60)=オーストリア・カンプ在住=が所蔵。コアールトさんの夫ウィルヘルム・クライマイヤーさん(65)から板東収容所に関する問い合わせがあり、回答したところ、返礼として11月19日に画像データが送信された。

 板東関連の写真は、これまで未確認のものを含めて50枚以上あるとみられ、ドイツ館が詳しい分析を進めている。デルトさんが以前いた中国・青島や丸亀収容所(香川県)での撮影写真も多く含まれている。

 初確認資料で注目されるのは、1919年10月12日に徳島市の芝居小屋・新富座で開かれた「俘虜演芸会」でのエンゲル・オーケストラの集合写真。楽団員ら日独64人の中央に、帽子に和服姿の松江所長が納まっている。ドイツ館の川上三郎館長は「官舎以外で和装の松江所長は初めて見た。捕虜と打ち解けた関係にあったのがよく分かる」と指摘する。

 同じく新富座で、正装に身を包んだオーケストラの17人が並んだ写真も貴重な1枚。主宰者パウル・エンゲルがバイオリンを手に堂々とポーズを取っている。

 19年3月22日に新富座で開かれた「和洋大音楽会」の演奏写真もある。以前から知られている写真だが、今回、より鮮明なものが入手できた。

 これら演奏会関連の3枚は、同館の企画展「ドイツと日本を結ぶもの-日独修好150年の歴史」(来年1月24日まで)で展示されている。

 板東収容所をめぐっては、18年6月1日のベートーベン第九交響曲アジア初演当日の撮影分を含む375枚もの写真画像が、ドイツ在住の捕虜の子孫から寄贈されたばかり。川上館長は「珍しい写真が大量に入手でき、今後の研究に弾みがつく」と話している。