1946年12月に発生した昭和南海地震で、被災した徳島県内の市町村が復旧事業費を確保するために起債(借金)の発行許可を知事に求めた「昭和21年度起債許可書」が、県立文書館で見つかった。建物や道路の損壊状況のほか、復旧に必要な金額などが詳しく書かれている。文書館は「被害の実態を知ることができる貴重な資料」と評価しており、来年秋に計画している昭和南海地震関連の企画展で展示する。
許可書はB5判で、徳島市、小松島町(現小松島市)、牟岐町など沿岸部14市町村の資料を1冊にまとめている。市町村ごとに被害状況と復旧事業費が記され、予算書が添付されている。
県内で最も多い85人が犠牲になった浅川村(現海陽町)の資料では8割の家屋が流失、全壊したことなどが記されており、村役場や病院の復旧費用総額369万4637円(企業物価戦前基準指数換算で約1億6600万円)の事業費のうち、170万9千円の起債発行を申請している。
橘町、見能林村(ともに現阿南市)は防波堤が壊れた箇所を地図で示している。中野島村(同)の申請にはのし紙が使われており、戦後すぐの震災で物資が不足していたこともうかがえる。
許可書は2002年に県地方課(現市町村課)から文書館に移管され、収蔵庫で眠ったままになっていた。同館が16年に昭和南海地震の企画展を開こうと所蔵資料を調べていたところ、見つかった。
金原祐樹課長補佐は「県内が南海地震でどんな被害に遭い、行政がどんな対策をしたのかを検証するための資料になる」と話している。