9月の自民党総裁選は、連続3選を目指す安倍晋三首相(党総裁)と、石破茂元幹事長の一騎打ちとなる公算が大きくなった。

 岸田文雄政調会長が総裁選に立候補せず、岸田派として安倍首相の連続3選を支持する意向を明らかにした。

 岸田氏はかねて9条改正には慎重な考えを示してきた。出馬すれば、憲法を含めて自らの国家像を語る絶好の機会となったはずだ。

 立候補を見送った理由について岸田氏は、西日本豪雨対応や北朝鮮問題、対米外交を挙げた。

 だが、額面通りには受け取れない。総裁選は最大派閥の細田派をはじめ、麻生派、二階派の支持を受ける安倍首相が圧倒的に有利な様相だ。岸田氏が出馬しても勝算がないばかりか、石破氏にも及ばない可能性もあった。

 3年後の禅譲も視野に入れて、戦いを避けたと見るべきだが、国を担う気概に欠けるとの印象は否めない。

 「安倍1強」の下、党内では、首相や執行部を批判しにくい雰囲気が支配的である。人事で冷遇されたり、選挙の公認で不利になったりすることへの恐れがあるようだ。

 総裁候補に限らず、政治家には胆力が必要だ。言うべきことを言い、正すべきことは正し、負ければ”冷や飯“を食う覚悟がなくて、総理総裁の座に挑めるはずはない。

 首相の対抗馬となる石破氏は都内で講演し「選挙は行われるべきだ。異を唱えなければ出る意味は全くない」と述べた。

 3年前の総裁選は首相が無投票で再選を果たした。選挙になるのは6年ぶりだ。

 憲法9条や経済政策、安倍首相の政権、党運営の在り方が主な争点になるだろう。活発な政策論争を展開してもらいたい。

 森友、加計(かけ)学園を巡る不祥事で支持率が落ち込み、一時は連続3選が危ぶまれた安倍首相は、新潟県知事選で自公系候補が野党候補を破ったことなどで、勢いを回復した。

 とはいえ、森友、加計問題は収束しておらず、首相の説明も不十分なままだ。官僚が政権に忖度(そんたく)するのは正常な政治の在り方ではない。

 一方で、首相には看板政策のアベノミクスによって、株価の上昇や企業業績の好転を促したとの自負もあろう。

 総裁選では、6年近く続いている安倍政治の是非が問われる。
野田聖子総務相も出馬を模索しているが、20人の推薦人集めは困難を極めそうだ。

 見逃せないのは、総裁選への対応を明確にしていない竹下派の参院側が、石破氏を支持する方向で調整に入ったことだ。石破氏は一定の票を獲得すれば、ポスト安倍の一人として存在感を発揮できる。

 新総裁の任期は2021年9月までだ。退陣や政権交代がなければ東京五輪後まで日本のかじ取りを担う。誰がふさわしいか、立候補者の主張を吟味しなければならない。