徳島市の阿波踊りの開幕まで2週間。夜のとばりが下りた街のあちらこちらでぞめきのリズムが鳴り響き、踊り子たちが練習に汗を流している。若者や親子、外国人、移住者―。年に1度の大舞台へと繰り出す多彩な顔触れの「踊る阿呆(あほう)」を紹介する。
「緊張するけど、一緒に楽しみたい」。今夏、新ばし連からデビューする女子高校生4人は不安と期待を抱きながら、大舞台に向けて練習に汗を流している。
岩本麻由さん(18)、増田由芽さん(17)、藪本有紗(ありさ)さん(17)=いずれも徳島商業高3年=と倉本陽向(ひなた)さん(18)=城西高3年。全員が城東中の同級生だ。幼稚園で踊った経験のある岩本さんが昨秋、「もう一度踊りたい」と思うようになり、仲の良い3人を誘って連に入った。
岩本さん、藪本さん、倉本さんは「かっこいいから」との理由で男踊りを、増田さんはしなやかで美しい踊り子を目指して女踊りを選んだ。
最初は基本動作を習得できずに苦労した。「足を意識すれば手の動きが分からなくなり、手を意識すれば足の動きが分からなくなる。この繰り返しだった」。こう口をそろえる4人だが、のみ込みの早い倉本さんの男踊りはどんどん上達した。
同じ男踊りの岩本さんと藪本さんは、倉本さんに追い付こうと必死になった。練習には欠かさず参加。休憩中や練習後には倉本さんに教わりながら腕を磨いた。
放課後や休日には無料通信アプリや電話で連絡を取り合い、うちわの持ち方や声の出し方といった踊りに関する悩みを打ち明けている。自宅では動画投稿サイト「ユーチューブ」で新ばし連の先輩や他の連の映像を見て、イメージを膨らませている。
「大好きな阿波踊りをずっと一緒に続けたい」。どんな時も互いに支え合う4人は、高校卒業後も全員県内で進学、就職するつもりだ。
本番は4日間毎日、演舞場に繰り出す。それぞれの立ち位置は離れるが「踊る前には必ず声を掛け合いたい」。高校生最後の夏を踊り子として迎える4人は、二拍子のリズムに身を任せながら友情の大切さを胸に刻む。