健康保険証の番号など個人情報を含む、全国約10万3千人分のリストが流出、名簿業者が一部を転売していたことが29日、分かった。徳島県内からは4025人分の流出が確認されており、全国で5番目の多さとなっている。情報セキュリティーに詳しい専門家は「複数の医療機関から漏れた可能性が高い。これほど大量の医療関連の情報漏れは過去に例がない」と指摘。成り済ましや詐欺などに悪用される恐れがあり、厚生労働省が調査を始めた。
 
 リストの記載は沖縄を除く46都道府県に及び、徳島や近畿に集中。取材に応じた全27世帯で実在の氏名や住所などと一致した。一部は現在の保険証番号がそのまま記載されていた。

 厚労省の担当者は「医療機関や薬局が業務で作った患者のリストが流出した可能性がある」として、調査を開始した。

 国内に住む人全員に12桁の番号を割り当て、将来的には年金などの個人情報を結びつけ管理するマイナンバー制度の運用が1月から始まるのを前に、情報管理の在り方をめぐり議論を呼びそうだ。

 名簿業者は「2008年12月にブローカーから買った。危ないデータだと驚いたが、一部は顧客に売った」と話した。

 共同通信が入手したリストによると、氏名、性別、生年月日、住所、電話番号のほか、保険種別や保険者番号、被保険者の記号番号が並ぶ。医療費の自己負担額の算定に必要な老人保健(当時)の区分や、生活保護などの公費負担を示すとみられる欄も三つ付いていた。記載されていたのは05年3月以前に生まれた人だった。

 都道府県別で最も多かったのは大阪府で約3万7千人、続いて奈良県が約2万5千人、滋賀県が約2万4千人、兵庫県が約8千人だった。

 取材の結果、氏名、性別、生年月日、住所、電話番号は27世帯44人全員が一致。このうち保険証番号も一致したのは6世帯11人だった。転職などで番号が変わったことなどが影響したとみられる。

 保険証番号とともに氏名や住所などが分かると保険証が再発行できる場合があり、本人に成り済まして借金するなどの悪用が可能になるという。

 真偽を調査 

 厚生労働省保険局総務課の話 医療機関や薬局が業務で作ったリストが流出したか、何者かが個人情報を悪用する目的でリストを作り、流出させた可能性がある。真偽を調査する。個人情報保護法に基づく厚労省のガイドラインでは、医療機関などが本人の許可なく第三者にデータを提供することを禁じており、今回の流出はガイドラインに抵触する可能性がある。