還暦を機に阿波踊りから離れていたゑびす連のベテラン鳴り物奏者が、15年ぶりに演舞場に戻ってくる。堀尾英昭さん(75)=徳島市安宅1=は「初々しい気持ちがよみがえってくる。わくわくする」と、軽快な締太鼓の響きに磨きをかけている。
連が5月に阿波おどり振興協会を退会したのがカムバックのきっかけとなった。協会の後ろ盾をなくし、連員から「今年はいつも以上に頑張らないといけない」との気概が伝わってきたためだ。「連のために役立ちたい」。その一心で復帰を申し出た。
城東高定時制2年の時、ゑびす連で踊っていた城東中時代の同級生に憧れて入連した。約7年間踊り子として活躍したが、「踊りはうまい方ではないと自覚していた。このまま続けても先はない」と、鉦や太鼓を習得した。20代半ばから鳴り物陣の中心的存在として連をリードしてきた。
還暦となった2003年に仕事が忙しくなり、練習に行けなくなった。若手の鳴り物奏者が育ってきたこともあって、連を去った。
阿波踊り中心の生活から一転、心にぽっかりと穴があいたまま過ごしていた。10年後、連の顧問就任を要請され、年1回の総会だけに出ていた。連員に会うと「帰ってきて」と言われたが、「いったんやめた身」と練習には行かなかった。ただ、心のどこかに演舞場への未練があった。
6月から連の全体練習に顔を出している。巧みなばちさばきは健在だ。鶴瀬幸子連長(74)は「おかげでみんなが一層、一つにまとまっている」と笑みを浮かべる。
連は今年結成70周年を迎え、節目の大乱舞を隊列の後方からもり立てる。堀尾さんは「無所属になっても『さすがはゑびす連』と言われるように頑張る。それがきっと恩返しになる」と完全燃焼を誓った。