肩凝りひどく熟睡できない

 【質問】80代前半の男性です。ひどい肩凝りに悩まされています。首筋から肩にかけてのだるさで夜中に何度も目が覚めるほどです。柔軟体操やウオーキングはほぼ毎日しています。以前、整形外科を受診した際に「なで肩とストレートネックが一因かもしれない」といわれたことはあります。原因や他の病気との関連、いい治療法があれば教えてください。

 林整形外科(阿南市見能林町堤ノ内)
 林一幸院長

 薬物療法より運動が大切

 【回答】肩凝りで悩んでいる方は実に多く、愁訴として腰痛と1、2位を分けます。原因、診断、治療において一致した意見はありませんが、概略を述べ、一助言にしたいと思います。

 肩凝りとは肩部(後頸部、肩、肩甲部、背部)の緊張を中心とする不快感、違和感、鈍痛です。頭部、顔面に波及した症状が見られることもあります。

 特別な病気を除いては、体形、生活環境、体力、加齢現象、疲労、ストレスなどにより肩部の筋肉が緊張し血行不良となります。それにより生じた発痛物質が筋肉内に蓄積され、神経系を介してさらに筋肉の緊張を高め、その血行障害が促進されるという悪循環に陥ります。

 要因の一つとして背骨(脊柱)の変化が指摘されているようです。

 頭部を支える背骨は、図のように緩やかなS字カーブを描くことにより負荷を吸収しやすい構造になっています。また椎間板、椎間関節が動くことで衝撃を緩和しています。

 その背骨中、頸椎は最も運動性の大きい司令塔的部位です。この頸椎の生理的前弯(前方への湾曲)が何らかの原因で消失した状態がストレート・ネックです。壁を背に直立し、後頭部が接するかどうかで自己判断できます。

 前弯がなくなると、頸部は前方に傾き、背骨全体のバランスが大きく崩れます。このため頸部後方の筋が引っ張られ緊張が強くなり(後頸部痛、頭痛)、肩部の関節の動きが抑制されます(可動域制限)。また頭位保持のため前方の筋の緊張が高まり、神経・血管症状が出やすくなります。

 同様に頸部の細長い人やなで肩では頭部を支える頸・肩の筋力が弱く、また鎖骨と第一肋骨間(胸郭出口)が狭く、神経・血管の圧迫症状が出やすくなります。「胸郭出口症候群」(腕・手のしびれ、だるさ、疼痛)は活動的な若い女性に多く、高齢者では少ないようです。

 夜間の頸・肩・腕のだるさや痛みは、ときに睡眠障害となることもあります。局所神経・関節支配神経の刺激症状が考えられます。また動きが硬くなった関節の運動時痛も関与します。

 ほかの病気との関連は、高齢者では特に多くありません。加齢変性による「頸椎症」「肩関節周囲炎」などがあり、運動制限、運動時痛が主症状です。しかし腕のしびれ、手指の運動、知覚障害、下肢症状、排尿障害など神経症状を伴うものでは受診の上、精密検査が必要です。

 最後に治療法は、その原因を除去することが基本ですが、確立されたものはありません。あくまで対症療法ということになります。薬物療法のうち、局所注射治療(トリガーポイント、神経ブロック)は有効性を高めるためステロイド剤を配合することが多いです。内服薬では各種鎮痛薬、筋弛緩薬、向精神薬(抗不安・睡眠薬)などがあります。その他理学療法(牽引・温熱療法)、装具療法(肩甲帯支持バンド)などが一般的に行われます。

 この中で、薬物療法は高齢者では体の特性(吸収、代謝、排泄)から薬の作用が増幅され、重大な副作用が生じる可能性があります(胃腸・腎障害、記憶認知障害、転倒など)。

 肩凝りの治療は、局所の運動以外にも柔軟体操やウオーキングなどの全身運動が精神面にも好作用を及ぼし、症状の改善につながります。薬に頼らず、体を動かすことが大切です。